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グーグルの高価な新ノートPC
「クロームブック・ピクセル」は成功するか

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第234回】 2013年2月27日
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 そんな状況にあって、ともかく裾野を広げてできるだけ多くのユーザーを囲い込もうという戦略もあり得るだろう。グーグルのハードウェアは、アンドロイド携帯であってもネクサス・タブレットであっても、他社製品よりも格安なのが魅力だったが、ここでハイエンドの製品を出して、高度なエクスペリエンスを望むユーザー層にもアピールしようという意図があるとも考えられるのだ。

 折しも、グーグルはアップルやソニーのような小売業に乗り出そうと計画中だという。イギリスなどでは、量販店の一角にグーグルコーナーを設けた小売店もあるようだが、アメリカではグーグル製品を買おうとすると、オンラインでの購入か、特定の量販店に行くしかない。

 「特定の」と書いたのは、グーグル製品のあまりの低マージンを嫌うチェーンが多く、取扱店が限られているからだ。だから、「まずは手に取って使ってみてから、買いたい」と思う消費者にとっては、それがかなわない。グーグルストアができれば、そんな問題も解決するだろうし、グーグル製品のまわりにリアルな賑わいを生み出すこともできるようになるだろう。自社製のアンドロイド携帯、ネクサス・タブレット、クロームブック、そして来るべきグーグルグラスを中心にして、アンドロイドやクロームをベースにした他社製品を並べた店舗になることが想像できる。グーグルストアなら、消費者の関心を惹き付けるだろう。

 グーグルがクロームブック・ピクセルを出したもうひとつの意図として考えられるのは、クラウド上のサービスを今後もっと充実させるのではないかということだ。

 今回のクロームブック・ピクセルについても、購入者にはさまざまな特典がついてくる。1テラバイトのクラウド上のストレージが3年間無料であるとか、飛行機の中でインターネット接続サービスを12回無料で使えるといったことだ。これに加えて、インターネット上のグーグル・サービスやクロームのインターフェイスが、どんどんクロームブック流に改良されていくというロードマップも考えられる。そうなると、クロームブック・ピクセルのようなグーグルのハードウェアのユーザー向けに、グーグルのサービスの使い勝手がより一段とグレードアップするというビジネスモデルも出てくるだろう。

 過去、グーグルのハードウェアの中には、コストをかけて開発されながらあっさりとコケてしまった例もいくつかある。クロームブック・ピクセルが、果たしてグーグルの新たな道を意味するものなのか。それは、いずれ明らかになるだろう。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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