Googleマップも活用、寄港地を動き回る中国人

 旅行が好きな私は上海外国語大学で日本語を教えていた時代から、日本人教師と、シルクロードや、西安、洛陽、黄山、桂林などの有名な観光地をいろいろと回っていた。生活の基盤を日本に移してからは、ヨーロッパ、ロシア、米国、東南アジアを旅した。作家として『地球の歩き方』などの観光ガイドやトラベル専門誌に寄稿したり、在日本新華僑社会で発行される中国語新聞でも観光をテーマにしたコラムを始めた。だから、観光については相当詳しいと自負していた。

日本人のデジタル音痴ぶりが「世界一周クルーズ船」でも露呈!中国人との格差大クルーズ船内の様子(著者撮影)

 しかし、今回の旅行で初めて、何も恐れず、見知らぬ異国の地に突入していくクルーズ船の乗客たちの姿を目にした。たとえば、グアテマラに寄港したとき、数人でタクシーを借りて古い町として知られるアンティグアを訪れ、民宿を探し出して1泊の短い旅行を楽しんだグループがある。他にも、ホノルルのコンビニで、バス乗り放題の格安交通カードを入手してオアフ島を一周する手作りの旅を始めた人たちもいる。

 彼・彼女らの旅行スタイルが知りたかったので、寄港地に降りてから、私も1日をかけて彼らにくっついて細かく観察する旅に出た。彼らの武器が複数のインターネットの情報ツールだという事実が判明した。

 検索エンジンとしての百度(バイドゥ)に対しては、私は基本的に評価しない。しかし、ニューヨークやハワイを旅行していたとき、数種類の地図アプリを使い比べてみたら、百度地図(バイドゥマップ)の実用性には舌を巻くところもあった。

「英語やスペイン語の壁もあり、土地勘のない異国の地を歩くには相当勇気が要りますね」と50代の中国人女性乗客のグループに声をかけてみると、彼女たちは「翻訳ソフトもあるし、インターネット環境があれば、どこに行っても心配は要らないわよ」とまったく問題にしていなかった。面白いことに彼女たちはGoogleマップをよく使っていた。「外国の土地だから、Googleの方が相性がよいはずだ」という理由だ。

 私が知っていた寄港地関連の情報のほとんどは、彼女たちも把握している。私がこれまで自負していた旅行関連の情報量と、差はほとんどないのだ。インターネットの普及は中高年の中国人女性に世界をまたがる自信と勇気を与えたと理解していい。

 数週間の共同生活で、インターネットの活用という視点から見れば、中国本土から乗船してきた乗客らは、他の乗客に比べて比較的若いだけに一番情報を持っているという印象を得た。しかし、講座などの学習系イベントの出席率は低かった。