日本人のデジタル音痴ぶりが「世界一周クルーズ船」でも露呈!中国人との格差大写真はイメージです Photo:PIXTA

クルーズ船でわかった日本のネット通信の遅れ

 私は、6月24日から大型クルーズ船、パシフィック・ワールド号に乗船していた。7月12日、ハワイのホノルル港で下船し、4週間近くに及ぶ長い旅行を終え、日本での日常生活に戻った。クルーズ旅行といっても、私の場合は、クルーズで開かれる講演の講師として乗り込んだので、出張と表現した方が正確かもしれない。

 今回、私が一番ショックだったのは、インターネット時代に対する日本社会の遅れがそのまま船上の日常に反映されていたことだ。

 コロナ禍によって、多くの方々と同じように私の海外旅行史に3年以上の空白ができた。出国の準備をしていたとき、一抹の不安があった。

 たとえば、インターネットなどの通信環境と手段の問題はどうクリアすべきかといったことだ。コロナ禍前は、クルーズ船で地中海周辺を回ったとき、陸地に近づくと、中国の通信会社のヨーロッパ域内で使える通信パッケージを使っていた。安くて通信スピードもよかったが、今回は中国の携帯電話のSIMカードが故障したため、使えなくなった。クルーズ船側に海外でも使えるWi-Fiなどの通信ツールに関して、おすすめツールや商品がないか相談してみたが、ないという答えだった。

 しかし、乗船してみると、強い通信手段を持っている人がいることに気づいた。中国本土の乗客とともに乗船した添乗員のS氏だ。彼は中国本土の乗客全員にヨーロッパ領域で使用できる期間限定のSIMカードを用意しておいたのだ。128元(約2500円)で27日間使い放題の通信パッケージだ。大喜びした乗客の中には2枚も購入した人がいる。

 船内で、この情報は台湾から乗船した乗客たちの中にも広がり、SIMカード2枚を購入した中国本土出身者から1枚を譲ってもらうなどの作戦が始まった。世界一周を航海する洋上で予期せぬ人と人との交流が深まり、政治によって作られた無形の壁はこうしていくらか飛び越えられたと思う。