定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる! マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されます。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。

「高額介護サービス費」「高額療養費」などの自己負担額が年間150万円以上変わる裏ワザとは?photo:Adobe Stock

稼いでいる子どもと同居している人は要注意

 介護保険制度の介護サービスを利用する場合、本人の自己負担は1~3割です。ただ、ひと月あたりの負担限度額が決められている「高額介護サービス費」制度があり、限度額を超えた部分は返してもらえます。自己負担限度額は、所得が多い人ほど高く、所得が低い人ほど低く設定されています。

 介護保険を利用できるのは、基本65歳以上ですから、「そのころには退職していて、所得なんかそんなにないよ」と思うかもしれませんが、この時の所得は「本人の所得だけでなく、世帯の所得で決まる場合」があります。

 仮に、介護を受ける人が、国民年金のみ年間78万円の所得の人の場合、単身世帯であれば、月の負担限度額は、1万5000円です。しかし、一般的な所得のある人と同世帯にしていた場合は、負担上限額が4万4400円になりますから、ひと月で2万9400円、年間で35万2800円の差が出る可能性があるのです。しかも、令和3年8月からは一定収入以上の高所得者世帯(同一世帯内の65歳以上の人の課税所得で判定)については負担上限額を14万100円と約10万円も引きあげましたから、この場合は年間で150万円も違ってきます。自分の所得は低いのに、同居している家族(たとえば子)に所得があるばかりに自己負担額がこんなに違うなんて……と思いませんか?

「世帯分離」するだけで年間100万以上変わることも!

 そこで検討したいのが「世帯分離」です。「世帯分離」とは、同じ住所で暮らす家族が世帯を分けて住民票を登録すること。

 同じ家で暮らしていても、親と子の世帯を分けて登録すれば、親世帯だけで所得の判定をすることになるので、介護保険サービス費の自己負担額を減らせる可能性があります。

 また、施設に入所する場合に、居住費や食費の負担を軽減できる可能性もあります。

 ちなみに、「世帯分離」をして、介護費用等を減らせるメリットがあるのは、介護を受ける人の収入が少ない場合です。

「高額療養費制度」の自己負担限度額や健康保険料も下がる!

「世帯分離」が効果的なのは介護保険だけではありません。「高額療養費制度」も世帯分離をすれば、所得の低い人の医療費の自己負担限度額を下げられる可能性があります。

 また、75歳以上の人が加入している「後期高齢者医療制度」などの保険料を下げられる可能性もあります。

 ただし介護サービスを2人以上で受けている場合などは、世帯分離することで負担が増えてしまうこともあります。

 また、国民健康保険に加入している場合は、保険料が変わる可能性もあります。

 世帯分離を検討する時は、分離した場合の保険料や様々な負担の増減、利用できる制度などについて、お住まいの市区町村に確認してみてください。

 *本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋・編集したものです。