日銀のYCC「柔軟化」は布石、マイナス金利撤廃は来年4月かPhoto:PIXTA

日本銀行が7月28日の金融政策決定会合でYCCの「柔軟化」を決めた。背景にあるのは、日銀が当初想定していた以上のインフレ基調の定着だ。エネルギー価格高騰の影響が剥落した後も、賃上げの価格転嫁などが進みインフレ率2%以上が定着する。来年4月にはマイナス金利も撤廃されるだろう。「柔軟化」はその布石である。(BNPパリバ証券経済調査本部長 チーフエコノミスト 河野龍太郎)

15カ月連続で物価上昇率2%超え
サービス価格の値上げも広がる

 6月の生鮮食品を除いたCPI(消費物価指数)コアは前年同月比3.3%(5月同3.2%)と引き続き2%を超えた。2%を超えるのは15カ月連続である。

 年始に付けた4.2%から低下したのは、エネルギーの前年同月比がベース効果や政府の物価高対策(電気代値下げ)で下落したためだ。6月は電力大手7社が規制料金を引き上げたが、それでも電気代は前年同月比マイナス12.4%(5月同マイナス17.1%)、エネルギー全体では同マイナス6.6%(5月同マイナス8.2%)と軟調だった。

 一方、生鮮食品とエネルギーを除くCPIコア(新型コア)の前年同月比は4.2%と、5月の同4.3%から若干低下したが、年始に比べると1ポイント高い。7月の東京都区部CPIでは、サービスの値上げの広がりによる新型コアの再加速も見られていた。

 足元では、長年、非正社員に大きく後れを取っていた正社員の賃金が上がり始めている。

 今年の春闘はベアで平均2%程度の賃上げで妥結されたが(定昇を含むと3.6%)、これを受けて賃金改定を行う企業が増え、5月の一般労働者の所定内給与は前年比2.2%まで上昇してきた。例年、大半の企業が賃金改定を完了するのは8月頃であり、所定内給与はさらに上昇する可能性もある。