東京の宿泊料は昨年11月から57%上昇、人手不足が先導する「悪いインフレ」の警戒局面にPhoto:PIXTA

高すぎて泊まれない東京のホテル
運輸、外食も人件費上昇で同じ構図

 ビジネスマンの間で最近、沸騰するのが出張旅費の話である。

 会社が定額で支給するホテルの宿泊費が安すぎるという不満が爆発する。

 もともとコロナ禍からの経済活動の本格回復で外国人旅行者や企業の出張などが増え、ホテル・旅館の予約が簡単には取れないことは知られていたが、仮に予約が取れても、会社から出張旅費として支給される額ではとても1泊の宿泊費を賄えない。

 人々から話を聞くと、超過した部分は自腹で負担していることが多いようだ。

 宿泊費のインフレに対して、会社という仕組みは機敏に対応できていない。何十年も昔と同じ宿泊費が変わらないという感覚で出張旅費を決めているからだろう。エコノミスト流に言えば、日本の会社はまだデフレ時代の感覚のままだ。

 この宿泊費の高騰の主因が人手不足で、従業員の確保のために時給などを上げざるを得ないための人件費の上昇だ。

 こうした構図は、宿泊業にとどまらず運輸、娯楽、外食などサービス分野に広がっている。

 2023年以降の日本の物価は、人手不足が主因で事業者の利益が圧迫される「悪いインフレ」を警戒する局面に入ってきたように思う。