おすすめポイント
仕事をしていれば、自然と多くの人と出会うことになる。そのなかで自然と「この人は気がきくな」「この人といるとなんだか気分がいいな」と思う人がいる。一方で、そんな様子に憧れながらも「自分はなんだか気がきかないな」「お互いに気分よく過ごせなかったな」と思っている人も多いはずだ。この差はいったい、どこから来るのだろうか。
本書の著者は、こうした差は特殊な能力ではなく、小さなことの積み重ねであると説く。
その背景にあるのは、著者が学生時代に没頭した演劇の世界での経験だという。「舞台上にいる人たちは、おたがいに相手を気遣いながらもみんな堂々としてしっかりと言葉を発し、自分の想いや意見をきちんと表現していた」と著者は語っている。
確かに、演劇とは言葉と振る舞いを通じてさまざまな想いを伝える芸術だ。その舞台に立つ人たちが、自分の小さな言動ひとつひとつに敏感で、結果として相手を思いやる気遣いを身に着けているというのは納得がいく。
演技とは自らを偽ることではなく、自分の言動が相手に伝わるようコントロールすることにほかならない。本書の提案する気遣いを実践しようとすると、最初は「気がきく人」をなかば「演じていく」という感覚になるかもしれない。しかしそれを続けていけば、いずれその態度が身につき、本当に「気がきく人」になることができるだろう。(池田明季哉)