韓国で長く読まれている勉強の本がある。日雇い労働をしながら4浪の末、ソウル大学に首席で合格した『勉強が一番、簡単でした』(70万部)。韓国では「受験の神」と称され、勉強に携わるもので、その名を知らない人はいない。日雇い労働者からソウル大学首席合格者になるまで、人生の大逆転を成し遂げた、韓国で知らない人はいない奇跡の物語。読後、モチベーションが高まり、勉強したくなる自分に驚くはず。超ロングセラー本『勉強が一番、簡単でした』から、その驚くべき内容を紹介する。

2ケタの足し算もできなかった青年が国内ナンバーワン大学に合格した「2つの能力を伸ばす方法」Photo: Adobe Stock

何が私を変えたのか

 受験勉強を始めた頃、私は最初の模擬テストで下位圏の4年制大学にやっと入れるほどの成績を取って、そのことに感激した。そんな私が、5年の歳月をかけたとはいえ、入試では誰にも負けない自信を持てるようになり、それがソウル大首席合格につながった。これは何を意味するのだろうか。

「人間の精神と肉体は、使えば使うほど強くなる」

 これはこの数年間、仕事と勉強をするなかで、私が体得した確信だ。以前は2ケタの足し算も暗算ではできずに頭を抱えていたのに、いまは2ケタのかけ算程度は暗算で簡単にできるようになった。

 私が通っていた予備校の近所に、中華料理店があった。ふだん私は弁当を2個持って予備校に通っていたが、日曜日は昼だけ弁当にして、夕食はしばしばこの中華料理屋でチャジャンミョン〔韓国風ジャージャー麵〕を食べた。

 ところで私が驚いたのは、この中華料理屋の主人のおばさんだ。満員の食堂のあちこちで客が注文するのだが、おばさんはそれをひとつも聞き漏らさずに厨房に伝えるのだ。そして料理ができると、客に一度も聞き返すことなく、注文の品を正確にテーブルに運んだ。さらに客が食べ終わると、何を食べたのか聞かなくてもさっと会計を済ませるのだった。私たちならいちいち伝票に書いておいても間違えそうなのに、慣れているからなのか、何の問題もなかった。だが、おばさんが最初からこうした能力を持っていたわけではないだろう。

 普通の人は逆立ちをするのも難しいが、体操選手が空中でグルグル何回転もするのを見ると、練習による能力の開発がどれほどすごいものかわかる。

 私も受験勉強を始めた頃は、数学の問題を解いたり英語を理解したりするのも大変だったが、だんだん実力がついてくると、もっと難しく複雑な問題も解けるようになった。

 そうなってから、以前に難しくて頭を抱えていた問題を見ると、非常に易しく見えるのだった。例えて言えば、棒高跳びで限界の高さだった目標をいったん飛び越えてしまうと、次からはそれが何でもない高さになるのと同じようなものだ。

 こうした過程を経て、私は「自由」について考えるようになった。持ち上げられなかった石を持ち上げ、解けなかった問題を解くことで得られる自由。限界の壁に突き当たり、じれったく思っていた自分が、その壁を越えることで開けた新しい世界に入る自由。

 これは生活においても同様だ。入試と闘う受験生の1日は、厳重に閉ざされた監獄のようなものだ。一寸の隙もないスケジュールは、まるで巨大な岩のように私たちを圧迫し、胸を押しつぶす。こんなきつい日程が続くと、とうてい耐えられないように思えてくる。

 ところが、1日、2日とそれに耐えているうち、いつのまにか教室でじっと座っていても、まったく窮屈さを感じなくなる。1日中、一言もしゃべらずに勉強ばかりしていても、帰宅するときの心はむしろ軽く、安らかだ。いったん克服すれば、それはもはや監獄でも限界でもない。

 人間は誰しも、精神的・肉体的能力において大きな差はないというのが、私の考えだ。だから誰でも自分の力を鍛えて能力を拡大し、限界を突破することで「自由」を得ることができるのだ。

(本原稿は70万部のベストセラー『勉強が一番、簡単でした 読んだら誰でも勉強したくなる勉強法』から一部抜粋したものです)