韓国で長く読まれている勉強の本がある。日雇い労働をしながら4浪の末、ソウル大学に首席で合格した『勉強が一番、簡単でした』(70万部)。韓国では「受験の神」と称され、勉強に携わるもので、その名を知らない人はいない。日雇い労働者からソウル大学首席合格者になるまで、人生の大逆転を成し遂げた実話。読後、モチベーションが高まり、勉強したくなる自分に驚くはず。超ロングセラー本た『勉強が一番、簡単でした』から、その驚くべき内容を紹介する。
今回は、本書の訳者である吉川南氏にインタビュー。吉川南氏とコンビを組んだ『勉強が面白くなる瞬間』は10万部を超えるベストセラー。今作でも翻訳をお願いし、著者の魅力が存分に伝わるた『勉強が一番、簡単でした』が誕生、この本の魅力をうかがった。
親が子どもに買ってあげたくなる
――『勉強が面白くなる瞬間』、日本でも10万部のベストセラーになりました。なぜ、日本人に受け入れられたと思いますか?
勉強本ではあるけれど、日本にはないスタイルであったことは間違いないでしょう。日本でつくるなら、ノウハウを前面に出してつくるだろうと。それを切り捨てたうえで、「とにかくやればできるんだ!」と、ノウハウぬきで、いかにモチベーションを高めるかに徹した本。これまでにはなかったスタイルですよね。
そんななか、中田敦彦さんが紹介して、一気に広まった印象です。
――振り返ってみると、中田さんに紹介される前に、Amazon総合6位(5/21付)でした。発売当初から多くの人に読まれていたのは、うれしいですね。
タイトルがよかったですよね。「勉強」と「面白い」、真逆のものを結び付けたところも。韓国で売れた要因の一つに、タイトルの意外性はあったのかもしれませんね。
――最初、「楽しくなる」だったんですけど、「楽しい」=「ラクになる」みたいなのがいやだったことを覚えています。
著者がある程度勉強できている人で、そこそこいい大学に入る話ではなくて、どうしよもないところからのしあがるところが、読者とうまくマッチしたのかなと思います。
――「手遅れだ!」と、始まりますしね。
そう。そして、どん底に落とされる。「では、どうすればいいの?」と続きが気になります。
親の立場で読んでみると、親の話が随所にでてくるところがよかったですよね。漢方薬を捨てて、先生に怒られた話とか。韓国ならではの話。日本の親にとっても、「子どもがこう思ってくれたらな~」と、希望的観測から、子どもに買い与える流れができたのでしょう。
――日本でも韓国と同じように、親が子どもに贈る社会現象が起きました。
今の若い人は、本を買わないし、お金を出して買う機会もなかなかない。書店で売れたのは、まさに親が買ったのでしょうね。
――自分で読んで、それから子どもに読ませたという話も聞きました。
読んでいるうちに、だんだんと引き込まれていく。ここから、どう展開していくのか。けれども、読んでも読んでもノウハウが出てこないという不思議な本。
後半、古今東西の「勉強できなくて大変だった人」の例が出てきますよね。あそこで、「おやっ」と思ってくれた人がいたようですし、「勉強できることがいかに恵まれているか」を知ることにつながるわけです。
――4人のエピソードを読ませるのも上手でした。
それが韓国っぽい。うまく日本でもマッチしました。ベタなんですけど、仕掛けにはまってしまうみたいな。この本にもベタなつくりはあって、翻訳本であるがゆえに、わりとナマの形で届けられたと思います。
(取材・構成/編集部 武井康一郎)
(本原稿は70万部のベストセラー『勉強が一番、簡単でした 読んだら誰でも勉強したくなる勉強法』をベースにしたインタビュー記事です)