国鉄は「決戦ダイヤ」改正で
通勤以外の旅客列車を大幅削減

 鉄道省は1943年3月に全急行列車を指定制とするが、4月2日付夕刊「急がぬ旅はやめよう」には、3日・4日の土日は「今春一番の人出が予想され、ことに2日夜発の夜行列車は各方面とも文字通りの殺人的混雑を見るものと思われる」として、国鉄は「輸送も戦場だ、徒な遊楽旅行はやめて下さい」と一般の協力を求めたと報じている。

 実際、4月6日付朝刊は2日の夜行列車から3日の早朝にかけて、リュックサック姿のハイカーやスキー客、釣り客などで「最高の人出」を記録したと伝えており「敵前旅行はほんとに自粛せよ」と批判している。

 これに対して国鉄は、夏季輸送対策として7月に料金値上げと券面通りに乗車券を使用しない乗客への罰則を制定。10月1日に「決戦ダイヤ」改正を行い、軍事輸送を増発するため通勤以外の旅客列車を大幅に削減した。同日夕刊の見出しにも「不急旅行は止めよう」とあることから、制限を重ねてもある程度の旅行者は残っていたようだ。

 12月15日付朝刊によれば、国鉄は年末年始においても一等車、寝台車、食堂車の連結を全面的に中止し、夜行列車は全て乗車指定制とした上で、乗車券の発売は各駅に割り当てられた枚数に制限する対策を講じている。

 同月16日付朝刊は「決戦へ捧げん輸送力」と題して、年末年始に1000人が旅行を中止すれば、東海道線の列車が1本削減可能で、これにより都民1日分の野菜が輸送可能だと指摘。温泉などの旅行客は従来の2割から5割減少しているが、いまだに一部の旅行斡旋会社が神社仏閣などへの戦勝祈願などを名目に、温泉地への遊覧旅行を行っていると伝えている。