債務不履行の増加による負の影響
ドミノ倒しのようにデベロッパーのデフォルトが起きると、中国はかなり深刻な経済環境に直面するだろう。すでに現在の中国経済はかなり厳しい。
中国ではデフレ(持続的に物価が下落する経済環境)の圧力が強まっている。7月、生産者物価指数(PPI)は前年同月比4.4%下落、消費者物価指数(CPI)は同0.3%下落だった。自動車や家電の需要は縮小し、輸入も減少した。半導体は米中対立もあり、輸出が減少した。主要経済指標は総崩れに近い。
それらの主たる要因が、不動産市況の悪化なのだ。土地譲渡益の減少により、地方政府の歳入は細くなった。地方政府傘下の投資会社、地方融資平台(LGFV)の債務問題も深刻だ。財政悪化によって、地方政府は機動的かつ大規模にインフラ投資などの経済対策を実施することが難しくなっている。
不動産やインフラなどへの投資減少によって、鉄鋼や銅線など基礎資材の生産能力が過剰になってきている。企業の設備投資など固定資産投資も停滞している。16~24歳の若年層を中心に、雇用と所得環境も悪化してきた。
カントリー・ガーデンなどデベロッパーが元利金を返済できない状況が発生すると、経済にネガティブなプレッシャーがかかる。デベロッパーは資産の売却を強化せざるを得ない。住宅の価格は下落し、建設途中で放棄される物件が増えたり、企業の倒産件数も増えたりするだろう。
その結果、労働市場の悪化懸念は高まる。資産価格下落により、金融機関は債権回収を急ぐ。返済に追われる個人、企業などは増える。債務返済を優先し、消費や投資を減らさなければならない経済主体は増える。こうして経済全体でバランスシート調整は深刻化する。
また、中国ではマンションの竣工前に購入契約を結ぶ人が多いといわれる。住宅を買ったものの完成した物件が引き渡されないケースは増えるだろう。それに伴い社会心理は悪化し、個人消費も冷え込む。川上から川下までデフレ環境はより鮮明となりそうだ。