景気停滞が予想外に長期化する懸念も

 振り返れば1990年の年初、日本で株価が暴落し、91年半ばには地価の下落も鮮明化した。法人部門を中心に、バブル膨張に伴って蓄積された過剰債務が不良債権化。その処理が遅れたことで、97年に金融システム不安が発生し、デフレ経済が深刻化した。

 こうしたわが国の経験以上に、中国が厳しい状況に陥る恐れがある。中国は、年金をはじめ社会福祉などセーフティーネットの整備が十分とはいえないからだ。少子高齢化の加速で介護負担が急上昇しており、将来に対する不安が高まっている。住宅ローン返済に応じない個人が増え、一部では返済拒否を主張するデモも過熱している。

 中国では都市と農村の戸籍の違いによって、受けられる社会保障の内容が異なることも、人々の不満や不安の一因になる。ゼロコロナ政策を含むコロナショックが長引いたことで、公的な医療保険の対象範囲を縮小する地方政府も出始めた。不動産市況の悪化、人口減少による税収減などによって、医療の自己負担増を市民に求める地方政府が増える可能性がある。

 過去のバブル崩壊を振り返ると、政府は債務問題を抱える企業などに公的資金を注入した上で、不良債権の処理を進める。規制緩和なども実施し、成長が期待できる分野へのヒト・モノ・カネの再配分を促進する。が、いずれも現在の中国で本格的に進む兆しは見られない。

 むしろ、共産党政権による締め付け強化で、IT分野における民間企業の成長は低下した。セーフティーネットへの不安もあり、貯蓄を優先する個人はますます増えるだろう。中国では、わが国が経験した以上に厳しいバランスシート調整が進む恐れが増している。

 米欧での金利上昇、半導体や人工知能(AI)に関する分野で米国が対中制裁や規制を強化した影響も大きい。中国から流出する資金は増加するだろう。カントリー・ガーデンのデフォルト懸念の高まりは、そうした負の影響を増幅する。中国の不動産市況を震源地とする世界同時不況の懸念が高まることも想定される。