留美さんと同じような状況の方に覚えておいていただきたいことが、不倫の慰謝料請求には時効があることです。民法では、不法行為による損害賠償請求権の時効を「損害及び加害者を知ったときから3年」としています。これを不倫慰謝料請求に置き換えると、「不貞行為があったこと及び不倫相手が誰かを知ったときから3年」となります。

 さらに注意が必要なのは、不貞行為があったときから20年が経過すると、被害者が不貞行為があったことを知らなくても、不倫慰謝料請求の権利が消滅する除斥期間があります。

 これは、婚姻届を提出していない内縁関係でも該当します。

夫に不倫の証拠を
突きつけた34歳女性の考え

 一方で、留美さんのケースとは異なり、不貞の事実を相手に突きつけて、関係修復の可能性を模索したいという人もいます。

 こういった依頼者の動機は、これまで支え合ってきた歴史や情、子どものことを考えたら両親がいた方がよいという、苦渋の選択によるものです。

 依頼者は往々にして、不貞行為の証拠をまとめた報告書と向き合い、怒りを爆発させたり、問題の根本原因を探ったり、自分自身に落ち度がなかったかに考えを巡らせます。私は数時間、話を聞いたこともありました。

 山本礼美(34歳、女性)さんは、夫が不倫をしているとにらんでいました。相手の女性は夫が経営する会社の女性社員で、半年ほど前から帰宅が遅くなり、休日に1人で出かけることが多くなったからです。

 付き合っている期間を含めると18年一緒にいる夫の変化に、礼美さんは敏感に気づきました。2人は、高校時代に出会い、貧しかった時から事業が成功した現在まで、苦楽を共にした歴史がありました。お互いにかけがえのないパートナーとして認識し合っていて、礼美さんの頭には離婚の発想はありませんでした。

 これまで仕事一筋だった夫は、若い女性との関係を一時的に楽しんでいるだけだと礼美さんには分かっていました。しかし、夫婦関係もマンネリ化していたので、これを機に夫との関係を改善しようと思ったのです。