トヨタ 史上最強#12Photo:AP/AFLO

トヨタ傘下の日野自動車と、独ダイムラートラック傘下の三菱ふそうトラック・バスが統合することで、トヨタは日野切りを実施することになりそうだ。豊田章男氏が社長時代に全方位で提携戦略を進めたことで、国内自動車業界における“トヨタ勢力圏”は膨張気味だ。『史上最強 トヨタ』の#12では、広げ過ぎた「チームトヨタ」にくすぶる三つの火種について解説する。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)

日野6政権でトヨタ出身者延べ61人
それでも「チームトヨタ」から脱落

 電光石火の提携劇だった。トヨタ自動車と独ダイムラートラックが商用車分野でタッグを組み、傘下の日野自動車と三菱ふそうトラック・バスを統合することにしたのだ。

 5月末に開催された記者会見では、4社首脳がそろって笑顔で登壇した。だが、華やかな会見とは裏腹に、日野を待ち受ける現実は極めて厳しいものになりそうだ。

 どういうことか。複数のトヨタ関係者は「章男さん(豊田章男・トヨタ会長)が、提携の発端になった“日野のエンジン不正”に対して怒り狂っている。経営統合により、日野はトヨタに切り捨てられたのも同然だ」と口をそろえる。

 統合スキームでは、上場新会社にトヨタとダイムラートラックが同じ比率で出資することになっている。まずはトヨタが日野への出資比率を持ち分法適用会社レベルまで引き下げて、いずれフェイドアウトしていくことになりそうだ。

 従来、トヨタは日野を完全な支配下に置き、グループ統治を徹底してきたはずだった。2001年に日野を子会社化して以降、小木曽聡社長が就くまでの6政権にわたって、トヨタは延べ61人ものトヨタ出身者を日野役員に送り出してきた(特集『日野“陥落” トラック大異変』の#1『日野自動車で続く“不正ドミノ”、親会社トヨタが「被害者面」では許されない理由』参照)。

 トヨタが人材を多数送り込むことでフルサポートを惜しまなかった企業であっても、品質不正を犯した事実は重い。商用車マーケットの難しさも手伝って、いとも簡単に日野が切り捨てられることになりそうだ。メルセデス・ベンツグループという有望な婚約先を得て、日野“切り捨て”のカウントダウンが始まっている。

 トヨタは全方位戦略を採用していることで知られるが、その対象は電気自動車(EV)やハイブリッド車など「電動車タイプ」の展開においてだけではない。協業や提携においても全方位戦略が採られてきた。

 次ページでは、トヨタが主軸となって広範に協業を進めてきた自動車同盟「チームトヨタ」の陣容を図解付きで明らかにする。国内自動車業界における「トヨタ勢力圏」の膨張ぶりが一目瞭然になるだろう。

 そして今、戦線を広げ過ぎたチームトヨタには「三つの亀裂」が生じつつある。中でも注目なのは、マツダとSUBARUとの関係性だ。これまでも、トヨタとこの二社の立場は揺れ動いてきた歴史がある。チームトヨタから脱落寸前の“第二の日野”となりつつあるのはどちらの企業なのだろうか。