トヨタ 史上最強#11Photo:AFP=JIJI

トヨタ自動車会長の豊田章男氏が社長在任14年で力を入れたのは他社との協業を通じた出資だ。「仲間作り」と称して、同業の自動車メーカーから異業種企業まで全方位に巨額の資金がバラまかれた。『史上最強 トヨタ』の#11では、豊田社長時代の「バラマキ投資」を検証する。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

テスラ提携を皮切りに全方位へ
「社長在任14年」で次々に資本参加

 マツダ、SUBARU、NTT、ソフトバンク、米ウーバー・テクノロジーズ、中国・滴滴出行(ディディ)――。豊田章男・トヨタ自動車会長が社長在任14年で広げた提携関係は全方位に広がっている。

 リーマンショックのどん底で社長に就任した豊田氏は就任初年度にして黒字を計上。米国で発生した大規模リコール問題に区切りをつけたタイミングで、最初に出資した案件が、米テスラだった。

 創業者のイーロン・マスク氏の自宅を訪ねてわずか1カ月で出資交渉をまとめ、2010年5月に資本・業務提携の記者会見をマスク氏と並んで行った。

 トヨタにとってベンチャー企業との本格的な資本・業務提携は初めてだった。就任初年度で黒字を計上した豊田氏が攻めの姿勢を見せるのに格好の案件でもあった。記者会見で豊田氏が相手企業のトップと握手を交わして親密さをアピールするスタイルは、この時に初めて披露されたものだ。

 だが、結果としてテスラとの資本提携は成果が乏しいまま解消した。取得した株は14年から段階的に手放して16年末までに売却している。

 このテスラへの出資を皮切りに豊田氏は、同業の自動車メーカーから異業種企業まで、あらゆる方面に次々と資金を投下してきた。

 次ページでは、章男氏が社長在任14年で手がけた「バラマキ投資」の費用対効果に迫る。「出資・買収の関係図」と「出資戦略の歴史」の二つの図版を使いながら、徹底検証していこう。