世界第2位の自動車部品メーカーのデンソーは、トヨタ自動車への遠慮もあって大型の企業買収を封印してきた。だが、トヨタ依存から脱却するため、民生機器用(非車載用)も含む半導体メーカーに転身する「仰天プラン」があるという。特集『史上最強 トヨタ』の#10では、デンソーの秘策に迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
新規事業で3000億円達成しても
トヨタ一本足打法からは脱却できない
かつて、トヨタ自動車の一部(電装品部門)にすぎなかったデンソーは、トヨタから分社された後、世界第2位の自動車部品メーカーへと躍進した。トヨタグループ内では、コア技術を握る最重要企業に位置付けられている。電気自動車(EV)時代の競争力の鍵を握るバッテリーの温度を保つ技術や電動化に強みを持つからだ。
しかし、デンソーには積年の経営課題がある。それは「トヨタ一本足打法」のリスクをいかに軽減するかという問題だ。
デンソーの事業規模は10年で1.8倍になったのに、トヨタグループに売上高の過半を依存する事業構造が全く変わっていない(詳細は次ページ図参照)。トヨタが出資するSUBARU、スズキ、マツダを加えたトヨタファミリーへの依存率は57%に上る。
そもそも事業規模6兆円超のメーカーが、売上高の9割を自動車という単一セグメントに依存すること自体がリスキーだといえる。
他ならぬデンソー自身が多角化の必要性を認識している。2030年までに農業、物流、ファクトリーオートメーションという「新規3分野」で売上高3000億円を目指しているのだ。ただし、目標通りに新規事業が成長しても、その売上高構成比は5%に満たない。
デンソーは、モーターや空調、ロボットなど幅広い技術があるのに、なぜ自動車部品メーカーの枠内にとどまっているのか。大きな理由の一つが、トヨタからのプレッシャーと同社への忖度だった。
次ページでは、デンソーが近年、トヨタからどのようなプレッシャーを受けていたのかを明らかにすると共に、デンソーがトヨタ依存から脱却するために検討している、「民生機器用(非車載用)も含む半導体メーカーへの転身計画」について詳報する。