今年5月、トヨタ自動車と独ダイムラートラックの提携と、両社の傘下にある日野自動車と三菱ふそうトラック・バスの統合が発表された。この会見の場で、トヨタの佐藤恒治社長から出た「日野を支えていくのは限界」との発言が業界内で大きな波紋を呼んだ。特集『史上最強 トヨタ』の#15では、この発言に透ける思惑に迫るとともに、トラック各社の真意を探る。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
日野と三菱ふそうが統合へ
佐藤社長の「限界」発言で広がる不安
「トヨタに切り捨てられた」
日野自動車と三菱ふそうトラック・バスの統合が発表された直後、日野ではこのような受け止めをする社員が少なくなかったという。トヨタ自動車と独ダイムラートラックの提携と、両社の傘下にある日野と三菱ふそうの統合についての会見で、トヨタの佐藤恒治社長が「われわれが日野を支えていくということに対する限界もあると正直思っている」と発言したことがその一因だ。
日野では社員に対し、「トヨタの連結子会社ではなくなるが、トヨタグループであることに変わりはない」といった説明をしているというが、佐藤社長の“限界”発言が一つのきっかけとなり、社員の間で少なからず動揺が広がっている。
日野の中堅社員によると、「ここ最近、30~40代で働き盛りの層の退職者が目立つ」という。退職理由全てが三菱ふそうとの統合ではないにせよ、「統合についてのネットニュースやSNSの情報を見て、先行きに不安を持つ社員が少なくない」(同)のだ。
業界関係者に取材を進めると、この限界発言が独り歩きした実態が浮き彫りとなった。トヨタの真の狙いはどこにあるのだろうか。
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