リーダーが自身の在り方を見直し、メンバーと日常のコミュニケーションを通してお互いの信頼関係が強化されていくと、言葉だけをキャッチされることも、リーダーがメンバーとの関係性に不安を感じることも減っていくはずです。

部下を傷つけないベストな
タイミングでのフィードバック

 例えば、こんなシチュエーションであなたならどんな対応をしますか?

 あるメンバーが社運をかけたプレゼンに挑みました。丁寧にプレゼンの資料をつくり、アイデアを尽くして登壇したプレゼンテーションで、クライアントの反応はいまいち。社運をかけた大事なプレゼンに負けてしまいました。

 残念でしたが、あなたにはその理由がわかっています。彼はチームで挑むはずのプレゼンで、メンバーと協力し、力を合わせることなくひとりで進めていました。メンバーの斬新なアイデアや意見が入っていたら、もしかしたら結果が違っていたかもしれません。

 あなたはリーダーとして、彼にどんな言葉をかけますか?

 大切なのは、その一言を伝える「タイミング」です。

 どこまで相手にとって一番いいタイミングで伝えられるか、どれだけ待てるか。気になった時、すぐに相手に伝えるのがいいわけではないのです。

 もちろん、正解はありませんし、日々結果を出さなければならない状況において、急ぐべき時もあるでしょう。

 ですが、その出来事を未来に向け最大限に活かすために、本人にとってベストなタイミングを見極めるには、日頃からその部下のことをよく観察し、よく理解しておく必要があります。

 ポイントは相手が自らそのことに向き合おうとしたタイミングを見逃さないことです。

 さらに重要なのは、相手に欠けていた視点だけを伝えるのではなく、「相手が大切にしているもの」とともに相手の「心の矛盾」をきちんと見てあげることです。

 フィードバックは奥が深いもので、やみくもに結果だけを拾って投げればいいというものではありません。ただ言葉にしてぶつければ、相手を傷つけてしまう可能性もあります。

 そして、忘れてはいけないのは、「何を言うか」だけではなく、「誰が言うか」によってその効果は全く違うということ。日常のメンバーとの関係性こそが、その一言が伝わるかどうかに大きく影響するのです。

 相手のことを本当に大切に思えば、伝えるべき言葉があります。ただ、その言葉も一番伝わるタイミングと伝え方があります。