岸田首相の周到な改造人事で、茂木派と麻生派に流動化と軋み9月13日、自民党の臨時総務会を終え、撮影に応じる(左から)選対委員長の小渕優子、総務会長の森山裕、副総裁の麻生太郎、総裁(首相)の岸田文雄、幹事長の茂木敏充、政調会長の萩生田光一 Photo:JIJI

「95点はあげてもいいんじゃないか」。こう語ったのは元首相の森喜朗。首相の岸田文雄が行った内閣改造と自民党役員人事への評価である。森は8月末に圧迫骨折のため入院を余儀なくされたが、人事を巡っては岸田からその都度連絡があったようだ。岸田はインドネシア、インドを歴訪中に最終的な陣容を森に伝えている。

「変化があれば、またご連絡します」

 確かに人事の結果は森からすれば“満額回答”を受け取ったようなものだった。オーナーの元首相、安倍晋三を失い、漂流寸前の安倍派を何とかまとめてきたのは森だった。その森が求心力を高めたのは、森が推した「5人衆」を岸田が人事でオーソライズしたからだ。

 官房長官の松野博一、経済産業相の西村康稔、自民党政調会長の萩生田光一、国対委員長の高木毅、そして参院幹事長の世耕弘成。

 岸田は今回の人事でもこの5人全員を留任させた。中でも岸田は萩生田と人事を前に2度も会談した。1回目は首相公邸で行われ、「萩生田官房長官説」も飛び交った。5人衆の中でも萩生田が頭一つ抜け出た印象を与えた。森はかねて萩生田を「将来の安倍派会長」と漏らしており、岸田の森へのメッセージと受け取られた。

 さらに森が「青木幹雄の遺言」として求めた元首相、小渕恵三の次女、優子の処遇も、岸田は小渕の選対委員長抜てきで応えた。もっとも小渕の人事は森への配慮を示すこともあったが、岸田には別の狙いがあった。