9月13日、首相官邸で記念撮影に臨む第2次岸田再改造内閣9月13日、首相官邸で記念撮影に臨む第2次岸田再改造内閣 Photo:EPA=JIJI

「変化を力にする内閣」ではなく
「自分自身の防衛力強化内閣」

 自民党役員人事の決定と第2次岸田再改造内閣の発足を翌日に控えた9月12日、JR高崎線宮原駅西口に、立憲民主党の枝野幸男前代表の姿があった。

「次元の異なる少子化対策とその財源」や「マイナンバーカードと保険証の一体化」、そして「防衛費増額に伴う財源とその使途」や「福島第1原発処理水放出の余波」など、この日、枝野氏が駅立ち(駅頭での演説)で指摘した問題のすべてが、とりもなおさず、岸田政権が抱える喫緊の課題になる。

 では、岸田文雄首相が今回の自民党役員人事と内閣改造でこれらの課題に向け、まい進できるのか?と聞かれれば、その答えは「極めて難しい」と言うしかない。

 岸田首相は人事を終え、9月13日夜の記者会見で、「この内閣は『変化を力にする内閣』だ。変化を力として『あすは、きょうより良くなる』と、誰もがそう思える国づくりを一緒に行っていく」と述べた。

 ただ、党内第2、第3派閥の領袖、麻生太郎氏と茂木敏充氏、それに、最大派閥安倍派から、「5人衆」の中でも中心的存在の萩生田光一氏を、それぞれ自民党副総裁、幹事長、政調会長に留任させた党役員人事には、安倍、麻生、茂木の3派閥を取り込み、来年秋の総裁選を無風に近い形で乗り切ろうとする思いが透けて見える。

 また、菅義偉前首相や二階俊博元幹事長に近い森山派会長の森山裕氏を、選挙対策委員長から総務会長に横滑りさせた点からは、なりふり構わず「総主流派体制で政権維持」という切羽詰まった感も読み取れる。

 内閣改造で言えば、

(1)「女性登用を目玉に」の狙いどおり、女性閣僚が留任を含め、過去最多タイの5人
(2)初入閣組が、19人の閣僚のうち半数を超える11人

 これら二つの点は、評価できなくもない。

 とはいえ、「刷新」のイメージを打ち出すなら、誰よりも代えるべきだった官房長官を、岸田派の小野寺五典元防衛相や根本匠元厚労相、あるいは突破力がある萩生田氏あたりに交代させてもよかったのでは、と思う。

 それを、萩生田氏と同じ安倍派「5人衆」の1人、松野博一氏留任で着地させた点、そして、2年前、総裁選で争った河野太郎氏と高市早苗氏を留任させた点は、「変化を力にする内閣」どころか、「変化させないことで首相自身の党内での防衛力を高めた内閣」とでも言うべきものだ。

 岸田首相は、9月5日、ASEAN首脳会議とG20首脳会議に出席するため日本を離れる直前、側近に、「最後の人事にするつもりで自前の人事を行う」という方針を伝えている。しかし、結果を見れば、安倍派、麻生派、茂木派におもねる人事になってしまったと論評すべきだろう。