東京都知事の小池百合子が思わぬピンチに直面している。小池がゴーサインを出した東京・明治神宮外苑地区の再開発を巡って反対の声が押し寄せているからだ。神宮外苑といえば、青山通り(国道246号)から聖徳記念絵画館に真っすぐに伸びる車道に沿って植栽されたイチョウ並木が思い浮かぶ。秋の黄金色に染まった並木は東京のシンボルでもある。その数146本。明治時代に新宿御苑のイチョウから採取された種で育てた苗木を植栽して今日に至る。
再開発事業はこのイチョウ並木の周辺一帯が対象で、神宮球場と秩父宮ラグビー場を、場所を入れ替えて新しいスタジアムを建設するほか、テニスコート、室内球技場、そして高さが200メートル近い超高層ビル2棟などを新たに建設する計画だ。今年2月に都知事の小池が事業を認可した。事業主体は三井不動産、伊藤忠商事、日本スポーツ振興センター、明治神宮。整備完了は2036年とされる。
計画ではイチョウ並木は伐採の対象ではないが、周辺の約1000本近い樹木の伐採が環境を損ない、イチョウ並木にも影響を与えるとして、早くから計画に反対する声が上がっていた。
ただし当初は一部の反対にとどまっていた。それが大きな広がりを持つようになったのは、音楽家の坂本龍一が再開発の見直しを求める手紙を小池や文化庁長官の都倉俊一ら5人に送っていたことが明らかになってからだ。東京新聞が4月12日付の朝刊で手紙の全文を掲載した。