本人と家族の希望で、家に帰ることを決断した矢先のこと。義仁さんの妻に疲労がたまり、一時的に体調を崩してしまいました。その時、義仁さんは「家内は頑張って世話をしようとしてしまい、1人で抱えて疲れてしまうんです」とポツリ。それから慌てて、「あ、こんなこと先生は関係ないのに、話してしまってすみません」と言うのです。

 関係ないどころか、妻に負担が集中しがちだという点は、これから在宅医療を始めるにあたって、私たちがケアの方針を立てる上でも、とても重要なポイントです。誰か1人に負担が集中する状況を防いだり、家族が疲れ過ぎないようにサポートを行うには、本人を支える家族の状況を知ることが非常に大事です。私は義仁さんや妻にも同様の話をし、「在宅医療を行う上での、本人や家族の心と身体に関わる心配事は、ぜひ遠慮せずに話してほしい」と伝えました。

 在宅医療を進める上で、療養する環境がなるべく良い状態にあるようにサポートするのは、私たち医療者や介護者の責任のひとつです。悩みや困りごとがあったら、「こんなこと話してもダメだろう」「自分たちで何とかしないといけない」と無理に抱え込まずに、医師や看護師を始め、ケアに関わる人にぜひ話してほしいと思います。