“余計な一言”の積み重ねが、「三木谷は嫌い」という世間の空気を作っている。三木谷自身もそのことに気づいているが「好感度で経営ができるわけではない」とたかを括っているのか、あるいは「いつか分かってもらえる」と甘えているのか。楽天を立ち上げて四半世紀が経過してなお、このクセは抜けていない。一方で「本当にまずい」と思ったときには、別の三木谷が顔を表す(本文含め敬称略)。(ジャーナリスト 大西康之)
「三木谷は嫌い」
2022年5月13日、楽天モバイルは国内携帯電話サービスの目玉だった「1ギガまで0円」の料金プランを7月に廃止すると発表した。0~3ギガが980円になる。「0円」の料金プラン「Rakuten UN-LIMIT Ⅵ」を導入したのが21年4月だから、1年余りでその旗を下ろすことになる。
「え、詐欺じゃん。楽天ひかりとセットで3年契約したのに」
「楽天モバイル、解約します」
発表と同時にSNS上には怨嗟の声が渦巻いた。
「0円」をぶち上げたとき、三木谷は「コロナ禍で国民がたいへんなとき、データをほとんど使っていない人からお金を取ることはしたくない」と大見得を切った。採算性を問うアナリストに対しては「楽天モバイルに加入した人は、楽天市場での買い物が増えることが分かっている。モバイルで稼げなくても、帳尻は合う」と説明した。当然「あの説明は何だったんだ」という話になる。ところが記者会見で三木谷はなおも強がった。
「980円は妥当。他社と比べてもアグレッシブ(な料金)だ」
勢い余った三木谷は言わずもがなの一言を発してしまう。
「0円のユーザーがいなくなって、熱量のあるユーザーがとどまる。ビジネスとしての質を上げるということか」という記者の誘導質問に引っ掛かり、こう言ってしまったのだ。
「ぶっちゃけそういうこと。まあ、お金を0円でずっと使われても困っちゃう」
これはアウトだ。自分たちから「0円でどうぞ」をオファーしておいて、「0円でずっと使われても困っちゃう」というのは、いかにも利用者を馬鹿にした物言いである。
こういう“余計な一言”の積み重ねが、「三木谷は嫌い」という世間の空気を作っている。三木谷自身もそのことに気づいているが「好感度で経営ができるわけではない」とたかを括っているのか、あるいは「いつか分かってもらえる」と甘えているのか。楽天を立ち上げて四半世紀が経過してなお、このクセは抜けていない。
一方で「本当にまずい」と思ったときには、別の三木谷が顔を表す。