大西康之
“余計な一言”の積み重ねが、「三木谷は嫌い」という世間の空気を作っている。三木谷自身もそのことに気づいているが「好感度で経営ができるわけではない」とたかを括っているのか、あるいは「いつか分かってもらえる」と甘えているのか。楽天を立ち上げて四半世紀が経過してなお、このクセは抜けていない。一方で「本当にまずい」と思ったときには、別の三木谷が顔を表す。

三木谷浩史が言う「楽天流」とは、大学の体育会系さながらの「身体性」を指す。社内公用語は英語、全社員のうち約2割が外国人の楽天が本社を構える二子玉川の洒落たオフィスで、週に1度、全役員・社員が腰をかがめて雑巾掛けをする様子は、ある種異様である。この楽天流にはもうひとつの“強み”がある。それは、日本最強企業、「トヨタ自動車」から持ち込まれた思想だ。

携帯電話事業をめぐる経緯を振り返ると、三木谷浩史と孫正義の違いが見えてくる。三木谷は自分たちで免許を取ることから始め、完全仮想化ネットワークを設計し、自分たちで1本ずつアンテナを立てた。孫は兆円単位の巨額投資で、すでに国から免許を得ているネットワークを持つボーダフォンやスプリントを買収した。自分の手でブロックをひとつずつ積み上げていくのが三木谷で、出来上がった“作品”をどんと買うのが孫。三木谷は根っからの事業家で、孫は投資家の色が濃い。

今や6年連続で人口増加率1位となった千葉県の流山市。『母になるなら、流山市。』というフレーズも有名になっている。実はその流山市には自治体にもかかわらず「マーケティング課」がある。何をやる課なのか?人口増加にどのように貢献したのか?井崎義治市長の狙いや現場の奮闘を紹介する。

#25
海外大物アクティビストと親子上場企業の法廷闘争が泥沼化している。発端は親子上場企業の経営統合で、アクティビスト側は、少数株主を無視した姿勢を問題視している。親子上場企業に巣くう“追認”社外取のガバナンス不全を指摘する。

#8
東芝が再建の切り札として打ち出した会社分割案は3月の臨時株主総会で否決された。投資家は執行部の保身ともいえるお粗末な一手を見逃さなかった。だが、そもそも東芝には「物言う株主」が推薦する社外取締役が存在するにもかかわらず、なぜ会社寄りの再建案が出されたのか。ガバナンス不全を引き起こす東芝の宿痾について明らかにしていく。

第479回
宮城県南三陸町。地元経済は震災の前から、すでに行き詰まりつつあった。そこに、とどめを刺すかのような津波。「もうだめだ」と諦めてもおかしくない状況の中、それでも未来を信じて歩を進めている人々の姿を追う。

第475回
関西に、電機大手を離職したベテラン技術者の駆け込み寺が二つある。日用品大手のアイリスオーヤマの「大阪R&Dセンター」と、ベビー服の西松屋チェーンだ。心ならずも去ったベテラン技術者たちは、ここで往年の輝きを取り戻している。

第472回
敗れざる人々の第2回。210年1月、JALは会社更生法を申請し倒産した。約5万いたグループ社員のうち、約1万6000人もの仲間が去らざるを得なかった。残った社員は稲盛和夫会長のもと、いかにしてJALを再生させたのか。

第470回
日本でも大企業神話が崩壊して久しい。実際、三洋電機は解体売却され、ソニーやシャープでも人員削減が続く。だが心ならずも会社を去った人々は敗者ではない。『会社が消えた日』の著者・大西康之氏が敗れざる人々の闘いを追う。
