りそなグループは、リテール強化のために2018年2月から「りそなグループアプリ」を活用。23年度から始まった中期経営計画では、培ったアプリ開発と活用のノウハウをベースに、地方銀行と新たな協業、いわばデジタル軸の新アライアンス構想を掲げている。特集『銀行リテール 最後の決戦』(全6回)の#5では、その全貌を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)
700万ダウンロードのアプリが軸
りそなが掲げる新アライアンス構想
「注視しておくべきなのは『りそなグループアプリ』だ」
あるメガバンク幹部は、個人向け金融サービスにおいてベンチマークしているのはどこかという問いに対して、迷いなくこう答えた。実はこうした反応は、他社からも聞かれる。PayPayや楽天グループなど、個人向け金融サービスで台頭してきたプラットフォーマーの幹部も、「りそなグループアプリ」の動向をウオッチしていると明かす。
りそなホールディングス(HD)はこの数年、個人や中小企業向けのリテール事業の強化を戦略の中心に据えてきた。2003年に注入された公的資金を15年6月に完済。それ以降の8年間、デジタル戦略で他行と差別化する「リテールNo.1」戦略を掲げている。
りそな銀行で個人向けリテール事業の指揮を執る原藤省吾執行役員は、「リテール事業の強化は、公的資金注入直後からの『細谷改革』が起源。メガバンクと同じことをやっても勝てないから、違うことをやるという考えで取り組んできた」と話す。
その武器となるのが、18年2月から提供しているりそなグループアプリである。テクノロジーを駆使したコンテンツ開発で世界的にも評価が高いチームラボと共同開発。約150回のアップデートと1000項目超の改善を重ねたことが奏功したのか、ダウンロード数は既に700万件を突破した。
だが、メガバンクやプラットフォーマーが警戒する理由は他にありそうだ。20年近く蓄積したアプリ開発や運用ノウハウを、地方銀行などに横展開する新たなアライアンス構想が動きだしているのだ。
それは、経営難に陥った地銀に他の親密な地銀が資本を注入する救済型や、菅義偉前政権時代の政治主導型の再編とは違う、デジタルを軸とした再編につながる可能性を秘めたものでもある。次ページで、その中身を解説していく。