金融DX大戦#4Photo by Yoshihisa Wada

三井住友フィナンシャルグループのデジタル推進を統括する谷崎勝教執行役専務がダイヤモンド編集部の取材に応じ、非金融業へ積極的に進出していく方針を明らかにした。そのためにデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させ、若手抜てきなど人事変革を進める。「銀行は将来、もはや銀行である必要はない」とまで言い切る覚悟のDX戦略とは何か。特集『金融DX大戦』(全22回)の#4で、谷崎氏の一問一答をお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

「なぜGAFAはこんなにもうかっているんだ!」
銀行から「はみ出ている」事業を続々展開

――谷崎さんは、太田純・三井住友フィナンシャルグループ(FG)社長の後任として2018年にグループCDIO(チーフ・デジタル・イノベーション・オフィサー)に就任しましたが、前任の太田社長から託されたCDIOとしての最大のミッションは何ですか。

 CDIOはグループ全体のデジタル推進の総責任者という位置付けなので、銀行だけではなく、証券、リース、カードといったグループ全体のデジタルを推進していこうというのが僕のミッションです。

 デジタルは業態を超え、金融業だけでなく非金融業の世界ともつながっていく。従って攻めのデジタルと守りのデジタルが必要ですが、攻めのデジタルは二つあると思っています。

 今までにない新しいサービスを創るデジタルイノベーションと、既存ビジネスでお客さんとのインターフェース(接点)を変えていくデジタルトランスフォーメーション(DX)です。

 このうちデジタルイノベーションの領域では、成功事例も生まれている。例えば電子契約サービスのSMBCクラウドサインは導入から2年半で黒字化した。改正銀行法第1号案件として設立した生体認証サービスのポラリファイも黒字化が見えてきた。

 他にも資産管理クラウドサービスのアセットフォース、データ分析支援サービスのカステラなどがありまして、これらの事業は金融の周辺領域に出ていくチャレンジだと思っています。

 最近売り出し中なのが、昨年設立したSMBCデジタルマーケティングという広告会社です。GAFAが世の中を席巻し始めた頃、「なぜ彼らはこんなにもうかっているんだ」「なぜたくさんの顧客接点を持てるんだ」と考えたんです。

 僕らはグーグル検索で一銭もお金を払っていないけれど、米グーグルは広告を出す企業からお金をもらうビジネスモデルですよね。これ、自分たちもデジタルの力で応用できるんじゃないかということで、電通グループと一緒につくったわけです。当時は金融業が広告をやる概念なんてなかったですけどね。

――どんどん銀行から遠ざかっていますね。

 遠ざかっているんじゃなくて、「はみ出ている」あるいは「にじみ出ている」というイメージですかね(笑)。

 なぜそうするかというと今、非金融業のECプラットフォームや決済事業者などが、どんどんどんどん、金融業に来ている構図があるからです。

谷崎氏は、業態を超えるデジタルの世界において、ECプラットフォームや決済事業者などの非金融業者が、金融業に攻め込んできている構図があるとの認識を示す。攻め込まれる一方の銀行に、一体どのような反転攻勢の策があるのか――。谷崎氏は新たなビジネスの方程式や、それを生かすための人事戦略、そして銀行員のあるべき将来像について語った。