みずほが、不祥事を何度繰り返しても生まれ変われず、金融庁に「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」と企業文化を酷評されるに至ったのはなぜか。その真相をえぐる本特集『みずほ「言われたことしかしない銀行」の真相』(全41回)の#32では、みずほが「りそなに抜かれた」と業界関係者が衝撃を受けた金融危機後に時計の針を戻そう。誕生時は最大の顧客基盤を誇り、ナンバーワンだったみずほフィナンシャルグループ。それがいつしか転落の道を歩み、メガバンクから脱落の危機に瀕している。どこで間違ったのか。

「週刊ダイヤモンド」2010年1月16日号の特集「上場企業がつきあいたくない銀行は?銀行失格」を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

みずほ銀行の本店所在地を巡って
旧富士銀行が旧第一勧銀つぶし?

 JR御茶ノ水駅の聖橋口を出ると、解体作業が急ピッチで進められているビルが現れる。ビルの名は御茶ノ水セントラルビル。2003年まで日立製作所が本社として利用していたものだ。

 解体後は、地上23階、地下2階建て、延べ床面積10万2000平方メートルの大型複合ビルが建設される予定で、12年の完成を目指している。

 じつはこのビルに、現在は東京都千代田区内幸町の旧第一勧業銀行本店に入居している、みずほ銀行(BK)の本店を移転させる計画が水面下で進んでいる。

 もともとこのビルには、大学が入居するはずだった。しかし交渉がうまく進まず断念。いずれも旧富士銀行、現在のみずほフィナンシャルグループ(FG)がメインバンクの大成建設やヒューリックといった計画主体がみずほに泣きついたのだと関係者は明かす。

 ところがおかしなことに、現在の建設計画のままでは、容量的にBKの本店機能すべてを収容するのは無理だというのだ。

 そもそも、千代田区大手町の旧富士銀行本店跡地に建設中のFG本部から遠ざかる御茶ノ水に、わざわざ移転させなければならないのか説明がつかない。

 確かにBKの本店は04年、経営環境の悪化を理由に1000億円あまりで売却。その後、10年契約で引き続き使用するサブリース契約が結ばれており、期限は残すところあと4年だ。周辺の開発計画がたびたび浮上しているものの、時間はまだあるし、売却した当時と違って買い戻す体力だってある。

 こうした事情についてみずほ関係者は、「旧富士銀行の旧第一勧銀つぶし」と説明する。象徴である旧本店をつぶすことで、旧第一勧銀出身者の気勢をそぎ、グループ内での存在感を消してしまおうというのだ。

 出身行によって多少、見方が違うだろうが、いずれにしても相変わらずグループ内での権力闘争に明け暮れていることには違いない。だが、みずほが置かれている状況を鑑みれば、そんな暇などないことだけは明白である。

りそなに劣る営業力
貸出金も大幅減少

 09年9月中間決算が発表された09年11月、金融関係者のあいだで驚きの声が上がった。

 メガバンク3行のうち、みずほのみが最終利益ベースで減益、額も1000億円台の2行と比べケタが違う878億円にとどまったからだ。だが、関係者の視線は別のところにあった。

「ついにみずほは、りそなにまで抜かれてしまった」