空間の描写、感情の説明、短縮形の有無に着目する

 自分の体験談について話している人が、そのときの空間に関する描写や、どう感じたかという説明をしない場合、ウソをついている可能性がある。

 たとえば相手が、自分の活躍のおかげで暗礁に乗りあげていた交渉を無事成功させることができたと話しているとしよう。その説明に、あたりのようすや、自分の感覚に関する描写がまったくでてこない場合は用心したほうがいい。

「会議室まで歩いていく道のりが、とてつもなく長く感じられました」(空間に関する描写)
「いい気分でした。取引に失敗したらどうしようと、それまで不安でたまらなかったんですよ」(自分がどう感じたかという説明)

 こうした説明や描写が含まれていれば、その話は真実である可能性が高い。

 もうひとつ、留意すべき失敗がある。ウソつきは話しているときに短縮形を使わない。つまりカジュアルな口調を避け、きちんとした言葉を使うのだ。有名なのはビル・クリントンが「あの女性とはセックスしていません」と言った例だ。「してない」(didn’t)ではなく、「していません」(did not)を使ったのである。

 その反対に、シェリル・サンドバーグがPBSのインタビューに応じたとき、フェイスブックの大規模な情報漏洩について尋ねられると、短縮形を使って「私たちの努力が足りなかった」(didn’t)と述べた。そう言いながら、彼女ははっきりと首を縦に振り、うなずいていたのである。それは、彼女が真意を述べていることを示していた。

「つなぎ言葉」は要注意

 会話のなかで使う「つなぎ言葉」は、文と文のあいだの溝を埋める役割をはたす。ウソをついている人は、都合の悪いことをごまかそうとするとき、この「つなぎ言葉」をよく使う。もし、相手が次に挙げるような「つなぎ言葉」をたびたび使うようなら、注意が必要だ。

 「それから……」
 「それから、私/彼女/彼/私たちは……」
 「その次に……」
 「気がついたら……」
 「あれよあれよという間に……」
 「次に起こったのは……」
 「突然……」

 以上の鉄則を活用すれば、あなたは面接で悪人を採用せずにすむはずだ。

 とはいえ、ほかにも手を打つべき点はある。私はいつも驚くのだが、求人の応募者に対する経歴チェックを怠る人は多い。だが、応募者の経歴をしっかりと確認するのはそこまで骨の折れる仕事ではないし、それほど費用もかからない。そのうえ、ここでしっかりと手を打っておけば、将来、起こりうるトラブルを回避できるうえ、多大な時間をムダにせずにすむ。

(本原稿は『超一流の諜報員が教えるCIA式 極秘心理術』ジェイソン・ハンソン著、栗木さつき訳の抜粋です)