スパイのスキルは「ビジネススキルの宝庫」だった!すばらしい実績を残したCIA諜報員におくられる賞を約10年の在職中に2度も受賞した著者が、訓練で身に着けたそのスキルの中から、ビジネスでも使える実践的な技を教える『超一流の諜報員が教えるCIA式 極秘心理術』がついに発売。
佐藤優氏「競争に勝つための表技と裏技が盛り込まれた、強いビジネスマンになるための必読書」と絶賛する同書より特別に一部公開します。

スパイが駆使する「マッチング」と「ミラーリング」の手法Photo: Adobe Stock

「マッチング」と「ミラーリング」で信頼を勝ちとる

 人はたいてい、自分と似ている相手と一緒にいると居心地のよさを覚える。だからといって、自分と外見が似ている人を好きになりやすいと言っているわけではない(たしかに、そうした例も多いけれど)。そうではなく、共通点が多い相手と一緒にいると、気が楽で、快適にすごせるという意味だ。自分と似た相手を好きになるのは人間に生来そなわっている性質なのだ。

 だから望みの相手と協力関係を築きたいときには、この人間の本質を利用しよう。諜報の世界では、相手から適切な情報を引きだす話術を身に付けるのは必須ではあるものの、相手のことをよく理解するには、言葉だけを重視してはならない。

 事実、統計によれば、コミュニケーションのなかで話し言葉が占める割合はたったの7%にすぎず、55%は顔の表情、残りの38%は声(声の高さ、口調、間合など)が占めている。

 そのため、相手と信頼関係を築くにあたり、スパイは相手の話し方を真似る「マッチング」と、相手のふるまいを真似る「ミラーリング」を活用する。これがうまくできるようになれば、相手はくつろぐようになり、あなたは信頼関係を育む土台を築けるはずだ。

「しぐさや口調」を真似る

 あなたも目指す相手と親密になりたければ、まずは身体の動きから真似てみよう。そうすれば、しだいに会話がスムーズに進むようになる。

 練習を重ねれば、あなたもこのテクニックを活用し、相手と良好な協力関係を築くことができる。

 では、相手のしぐさや口調のどこに着目すれば、「マッチング」と「ミラーリング」に利用できるのか、いくつかキーポイントを見ていこう。

顔の表情:顔には不安の色が浮かんでいるだろうか。それとも、驚き、悲しみ、喜びといった表情が浮かんでいるだろうか。あいまいな表情を浮かべているだろうか。それとも、いたってわかりやすい、簡単に読みとれる表情だろうか。あるいは、おおげさで、わざとらしいだろうか。

姿勢:椅子に座ったまま、ふんぞり返っているだろうか。それとも、身を乗りだしているだろうか。両手で頭を抱え込んでいるだろうか。あるいは、しっかりと背筋を伸ばして座り、緊張しているだろうか。

口調:気持ちを伝えようとすると、人は自然と口調を変えるものだ。相手の声から、どんな感情が伝わってくるだろうか。会話が進むにつれ、その口調はどんなふうに変わってくるだろうか。

身振り:相手は手を動かして話しているだろうか。その人に特有の、なにか癖のあるしぐさをしているだろうか。

テンポ:相手の話は速くなっているだろうか。それとも、ある話題になると、ゆっくりとスピードが落ちるだろうか。

呼吸:息遣いが荒くなっているだろうか。その反対に、ときには息遣いが安定するだろうか。

身体の接触と相手との距離:論点を強調したいとき、こちらの手を軽く叩くだろうか。それとも、話しながら身を乗りだしたり、その反対に身を引いたりしているだろうか。