稲盛和夫氏Photo:JIJI

40代といえば、知見や人脈が結実した働き盛りとしてますます活躍できるか、体力や気力の衰えを感じて第一線を退き始めるかの境界線を迎える時期だ。そこで今回は、40代からさらに成長したい人に向けて、著名な経営者3人の40代の経験を振り返り、そこからの学びをお届けしたい。(イトモス研究所所長 小倉健一)

サントリーHD・新浪剛史社長と
経団連・十倉雅和会長の40代とは?

 筆者は、来月44歳になる。10代、20代とこんなに時間というのはゆっくり流れるものだと考えていたが、年々、時間が過ぎていくのが早く感じるようになった気がする。白髪も目立ってきたし、体力も衰えている自覚はないのだが、目がすごく悪くなっているような気がしている。この先、自分の身体がどうなってしまうのだろうと、相手が40代後半から50代前半と分かると、健康状態について聞くことが多くなった。

 周りでは、若い頃の暴飲暴食をやめて筋トレをやりだす人たちが非常に増えた。「筋トレとか、アホか」と、20代の私だったら罵倒していただろう。今は真剣にやった方がいいのかと、毎日のように苦悶している。やった方がいいのだろうが、絶対にやりたくない。迷っている。

 40代で身体に起こる変化などを調べてみると、個人差はあるものの、体力的には衰えつつも判断能力はこれまで生きてきた経験や知識を生かすことができるようになる。問題解決能力も高いようだ。

 ただ、集中力が若い頃と比べて続かなくなったり、情報の処理能力が減少していったりする。感受性も若い頃にはかなわない。

 組織では、現場と経営をつなぐ管理職のポジションにいる人が多い。私は、2年ちょっと前に勝手に組織を飛び出してしまったものだから、中間管理職の苦悩とは別世界にいるが、40代とは転職もそろそろ諦め、いよいよ会社人生に向き合わなければならない年代である。

 もう連載は終了してしまったが、私がかつて在籍していた編集部が作っていた雑誌「プレジデント」には、『経営者たちの四十代』という、その名の通り、経営者たちの40代を振り返ってもらう企画があった。編集部在籍当時は自分の担当でもない連載ページなど読む暇もなかったのだが、今その連載を読み直すと、面白い連載だったのだと感じた。

 そこで今回はその連載の中から、2人の「40代の振り返り」をご紹介したい。一人は、今、何かと話題の新浪剛史氏。経済同友会の代表幹事で、サントリーホールディングスの社長である。もう一人は、日本経済団体連合会(経団連)の会長で、住友化学の会長でもある十倉雅和氏だ。

 この2人の40代の経験を見てみると、「経営の神様」と呼ばれた稲盛和夫氏との共通点が浮かんできた。そしてそこから学べることは、40代になってもさらに成長したいと思う人にとって最高の教科書になるだろう。著名な経営者3人は、どんな40代を送ったのか。