市場重視の「リコノミクス」頓挫
習主席との溝深まり役割低下
中国の李克強前首相が10月27日に死去したと報じられた。突然の訃報に、中国経済の停滞感と同氏引退の関連性があらためて浮き彫りになったような印象を抱かざるを得なかった。
李氏は改革派の旗手として構造改革の必要性を主張した「リコノミクス」を提唱したことで知られているが、金融市場では、中国のGDPは信頼できないとして「電力消費量、貨物輸送量、銀行融資」の3つの統計を重視している、と公言した人物としても有名だ。
市場を重視し、金利の自由化や人民元の国際化などの方向性を唱えたことでも、国際金融界では注目度は中国内の誰よりも高い人物だった。
だが、統制を強める習近平国家主席との溝は深まるばかりで、徐々にその役割は低下し、存在感も薄れ、昨年の党大会で慣例の「68歳定年」を迎える前にナンバー2の地位から引きずり下ろされた。
李氏のような経済通の存在感を薄くなるのと歩調を合わせるように、中国経済は勢いを失い、停滞局面から抜け出せなくなってきた。とりわけ習近平体制の政策が「予測不能」なことが国内外の不信感を強める。
李氏の逝去を悼む声は習体制下の中国経済の低迷を嘆く声と同期しているかのようだ。