大学生は自腹で学校へ!
少子化対策にも効果的

「消費者」視点が市場を動かす!<br />学生よ、自腹で大学へ行きなさい藤野英人(ふじの・ひでと) レオス・キャピタルワークス取締役・最高投資責任者(CIO)1966年、富山県生まれ。1990年、早稲田大学卒業後、国内外の運用会社で活躍。特に中小型株および成長株の運用経験が長く、23年で延べ5000社、5500人以上の社長に取材し、抜群の成績をあげる。2003年に独立し、現会社を創業、成長する日本株を組み入れる「ひふみ投信」を運用し、ファンドマネジャーとして高パフォーマンスをあげ続けている。この「ひふみ投信」はR&Iが選定するファンド大賞2012の「最優秀ファンド賞」を受賞した。著書に『日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい。』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金よりも大切にしていること』(星海社新書)ほか多数。明治大学講師、東証アカデミーフェローも務める。
ひふみ投信:http://www.rheos.jp/ Twitterアカウント:twitter@fu4

藤野 突拍子もない話に聞こえるかもしれませんが、僕には日本経済活性化の腹案があるんです。それは、大学生になった人は学費プラス生活費程度のお金を国家の保証で銀行から借りられるようにするというもの。つまり、「親が頑張って教育費を出すのは高校まで。大学は、自分で借金をして、責任を持って選びなさい。そのかわり、学費と生活費の借り入れについては国が保証する」ということです。
 今の大学生は、コンシューマーでありながら、お金は親に出してもらっているという、いわば中途半端な存在です。これが、自分で借金して学費を負担するとなれば、授業の質や自分の将来に与えるパフォーマンスなどに対して感度がぐっと上がるでしょう。
 それに、この制度は少子化対策にもなります。「子どもを産んでも、金銭的に大学まで行かせるのが難しい」と不安を抱いている人は少なくないでしょう。

 もし「親は高校まで行かせればよく、大学からは本人が自分の意思で進路を選べる」となれば、負担感がずっと軽くなります。実はアメリカでは、国家の保証こそありませんが、奨学金制度や銀行ローン制度が充実しているので実質的に親の負担が軽減されているんです。
 日本は、親が子どものためにお金を出しすぎなのではないでしょうか。結果的に親が疲弊してしまい、少子化にも悪影響を及ぼしますから、これは改善すべきだと思います。

瀧本 確かに、方法はさておき、大学生へのファイナンスというのはありうると思いますね。
 日本人は子ども手当などのように直接給付を行う“バラマキ”を嫌がる傾向がありますが、私はバラマキを素晴らしいと思っているんです。なぜならば、バラマキは選択と責任を与えるから。つまり、ちゃんと市場原理が働くのです。 
 たとえば子育て世帯への支援で言うと、国が幼稚園や保育園に助成して「国が決めたところに行ってください」というのは、国民に選択権を与えず、国への依存を高める政策です。
 もしも「国がコメを作ってあげるからそれを食べなさい、良いコメか悪いコメかの選択の余地はありません」となったら、暴動が発生するでしょう。それなのに、幼稚園や保育園、大学を国が支援することに疑問を持たないのは、おかしな話です。
 今は大学が多すぎることが問題になっていますが、なぜ大学がこんなに多いのかといえば、大学に対して補助金が降りるからですよ。本当は、コンシューマーである学生に直接お金をばらまいて、良い大学を選ばせたほうがいい。そうすれば、「学生が減って経営が苦しいけれど、補助金で何とか成り立っている」といった大学は淘汰されるでしょう。

藤野 私立大学も国からお金が出ていて、いわば「半国立」なんですよね。その結果、カリキュラムや教授の選択に文科省の影響力が及ぶことになっていて、市場の規律が働かなくなっている。

瀧本 コンシューマーにお金をばらまけば、みんなお金を無駄にしたくないから自分でよく考えて選択するようになります。「そうは言っても、判断能力がない人もいる。失敗しないように国に決めてもらったほうがいい」という意見もあるでしょうが、判断する機会を与えられなければ人は学ぶことが出来ず、永久に判断能力がないままです。
 だから、「失敗してひどい思いをしてください、そこから学んでください」というのが望ましい。私は、お金を特定産業のプレイヤーにばらまく政策より、コンシューマーにばらまくほうがずっといいと思います。