銅相場は11月に下落一服も、米中経済の先行き不透明感が上値を抑えるPhoto:PIXTA

世界景気の動向に敏感な指標として注目される銅相場は、2023年8月初めに1トン当たり8860ドルと6月以来の高値に上昇した後、下落傾向で推移して10月下旬には7856ドルと2022年11月以来の安値を付けた。その後、一進一退の中で、11月半ばには8300ドル台まで値を戻したが、上値は重い。その原因は米中経済を中心とする先行き不透明感にある。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

8月は中国景気減速懸念で
高値を付けた後下落傾向

 8月以降の銅相場を振り返ると、8月1日は、一時8860ドルの高値を付けたものの、その後、米景気のソフトランディングへの期待が高まる中でドル高が進み、ドル建てで取引される銅は割高感から売られた。7月の財新/S&Pグローバルによる中国製造業PMI(購買担当者景況指数)が弱かったことも下押し材料だった。

 翌2日は、格付け大手フィッチ・レーティングスによる米国債格下げを受けたリスク回避のドル高などを背景に、銅は続落した。8日は、最大消費国である中国の貿易統計で輸出入がともに前年比2桁マイナスとなったことや、自動車販売が2カ月連続で前年割れとなったことで同国景気の弱さが懸念され、相場は下げた。

 15日は、7月の中国の鉱工業生産や小売売上高の前年比増加率が前月を下回ったことが売り材料になった。中国人民銀行が政策金利である最優遇貸出金利(LPR)の参照基準となる中期貸出制度(MLF)の金利を引き下げたものの、景気下支えには力不足と受け止められた。

 もっとも、22日は、前日に国際銅研究会(ICSG)が発表した今年上半期の中国の精錬銅の見かけ需要が前年比約9%増と堅調であったことが支援材料になった(世界の見かけ需要は同約4%増)。中国当局による人民元安抑制策が奏功して元安が一服したことも銅買いにつながった。

 23日も中国の銅消費が堅調との見方が銅相場を支えた。8月のS&Pグローバルによる米製造業PMIが6カ月ぶりの低水準となり、ドル安が進んだことも銅相場を支えた。29日は、米求人件数の減少で米追加利上げ観測が後退してドル安が進んだことや、中国の大手国有銀行が住宅ローン金利と預金金利を引き下げる準備をしているとの報道を材料に銅相場は上昇した。