9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で追加利上げの可能性が示唆された。金利上昇は金相場にとってマイナス材料。しかし、ウクライナ情勢、米政府機関の閉鎖懸念などリスクオフ要因には事欠かず、金相場は底堅い展開が予想される。(三菱UFJリサーチ& コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)
6月は一進一退後
一時1900ドル割れ
金相場(現物)は、2023年に入って上昇基調で推移し、5月4日には1トロイオンス当たり2072.19ドルと20年8月の史上最高値(2072.49ドル)に迫った。その後、下落傾向だが、安値でも1800ドル台後半と下値は限定されている。
夏場以降の金相場動向を振り返ると、当初は、日々の値動きが大きいながら一進一退で方向感なく推移した。
6月1日は、前日にFRB(米連邦準備制度理事会)の高官が6月13~14日のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ見送りを支持する発言をしたことや、米新規失業保険申請件数やISM(米供給管理協会)の製造業PMI(購買担当者景況指数)が悪化したことが米金利低下やドル安につながり、金相場を支援した。
翌2日は反落した。米上院が債務上限関連法案を可決して連邦政府の債務不履行が回避される見通しとなったことや、5月の米雇用統計で堅調な雇用増加ペースが確認されたことが金には弱気材料となった。
ISMによるサービス業PMIが弱めに出た5日は、米景気減速観測や6月FOMCでの利上げ見送り観測が強まり、金の買い材料になった。
7日は、カナダ銀行が大方の予想に反して再利上げに踏み切ったことを受けて、翌週は利上げの見送りが濃厚なFRBもいずれ追加利上げを迫られるとの見方が強まり、金相場を圧迫した。
14日は、FOMCで予想通りに利上げが見送られたものの、政策金利見通しで年内にあと0.5%の追加利上げが示されたことが売り材料となり、金は小幅安だった。
6月後半も金は売られた。20日は、5月の米住宅着工件数が市場予想を上回ったことが米利上げ再開観測につながり金は下落した。
21日は、パウエルFRB議長が米下院金融サービス委員会での議会証言で「年内にいくらかの利上げが適切」と述べて弱気材料になり、その後の「より緩やかな利上げペースが理にかなう」とのハト派発言を相殺した。
BOE(英イングランド銀行)が0.5%の大幅利上げを決定した22日は、FRBなどの追加利上げも連想されて、金相場は下落した。パウエル議長が米上院銀行委員会での証言で、前日に続いて「追加利上げが適切」と述べたこともタカ派的と受け止められた。
29日には、1~3月期の米実質GDP(国内総生産)の上方改定や米新規失業保険申請件数が市場予想を下回ったことも米利上げ観測を強めて、金は一時1900ドルを割り込んだ。