ホンダとトヨタ自動車は技術開発や販売でしのぎを削ってきた。特集『ソニー・ホンダの逆襲』(全18回)の#15では、両社の組織風土や “世界初”の技術的な快挙を比較しながら、規模で劣るホンダがトヨタと伍して戦ってこられた要因を明らかにするとともに、EV時代に再び金星を挙げるための条件に迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
重要な技術的な快挙は
ホンダが五つに対し、トヨタは二つ
トヨタ自動車とホンダは、全く異なる社風を持つ。それを端的に表しているのが、創業家出身の経営者の数だ。ホンダの創業者、本田宗一郎氏は世襲を嫌い、親族を入社させなかった。これに対し、トヨタでは6人もの創業家出身者が社長に就いているのだ。
創業家の権限の強さは、創業家に求心力がある限りにおいて会社の“強み”にもなる。だが、創業家からのトップの登用を前提にした人材の選抜は、個人の能力を尊重した人事や組織運営とは相いれない。
その点、ホンダは比較的、民主的だ。研究開発で実績を上げた技術者が社長を務め、それを事務系の副社長が補佐するという“定型”がある。
技術開発においても、両社には大きな違いがある。ホンダの特徴は何といっても、カリスマである本田氏に心酔する技術者が、難題に挑戦する“一点突破”のスタイルだ。
これにより七つの「世界初」の技術的快挙を成し遂げた。とりわけ米国の排ガス規制、マスキー法を初めてクリアしたエンジン、CVCCの開発成功は語り草になっている。
次ページでは、ホンダがトヨタとの技術開発競争では互角以上の戦いをしながら、商業的に敗北した経緯を明らかにするとともに、EV時代にホンダが再び輝くための同社の“強み”を解明する。