DIMENSION代表取締役社長 宮宗孝光氏

2021年のスタートアップシーン・投資環境について

2021年を振り返って、大きく3つのことを感じています。

(1)東証マザーズへの上場社数は過去最多の90社以上を記録しました。時価総額1兆円を突破したメルカリや上場後に数百億円の資金調達を実現したfreee、マネーフォワードなど、総じてスタートアップの存在感や躍進が目立つ1年でした。

(2)米PayPalによる3000億円でのPaidyの買収や、海外大手PEファンドが未上場スタートアップへの出資を始めるなど、海外含む大きなお金が国内スタートアップに流れはじめた1年だったと思います。数十億円単位の増資を実現するスタートアップが数多く現れたのも印象的です。

(3)昨年以上に“苦戦組”と“堅調な成長を遂げた組”の差が、拡大した1年だったとも感じています。

コロナは、環境変化に伴うゲームチェンジの重要性をしみじみと認識させた出来事だったと思っています。成り立たなくなったビジネスモデルやオフィス環境など、これまでの定石を環境に合わせて大胆に変え、いち早く実行することができたスタートアップは、業績を大きく伸ばしている所が多いと感じています。

2022年の投資環境の変化や注目領域・プロダクトについて

2022年以降に盛り上がりが予想される領域は、国内で2つあると認識しています。

1つめは、ヘルスケアと社会インフラ。これまでの人や紙ベースだったり、対面では応対できないが、真剣に悩む多くの顧客が存在するヘルスケア領域は新しいやり方が渇望されています。また昭和に整備された道路や橋、都市のインフラは経年劣化により修繕や入れ替えが必要になりつつあります。結果、規制緩和が起こったり、提供するサービス・商品の進化により、新たな市場が形成されていくと考えています。付き合いのある顧客候補やプレーヤーとのやり取りから、そうした潮流を感じています。

2つめは、海外展開。先ほども海外含む大きなお金が国内スタートアップに流れはじめたとお伝えしましたが、そうした大きなお金を活用して、海外への事業展開を図る起業家が現れはじめるのではないかと感じています。創業した会社を離れた後、2回目の起業をされるシリアルアントレプレナーが日本でも増え始めていますが、そうした経験を積んだ起業家が次は海外で大きく事業を伸ばすチャレンジを始めるように思っています。

また長期トレンドにはなりますが、今まで以上に「SDGs」「サステナブル=地球環境維持」に注目が集まると予想しています。4年ほど前から大きなキャッシュを持っている機関投資家がSGDsの視点での投資を世界的に増やしており、今は「SDGsに即しているか」、「地球環境維持に通じる事業か」で投資判断が変わる世界になりました。大きなキャッシュが集まる所でスタートアップが増えるのは、自然なことだと考えています。