会社を立ち上げた理由は、「プロダクトを作って世の中にインパクトを与えたい」という想いがあったからです。とはいえ、創業当初は(ベンチャーキャピタルから)資金調達をしたわけではなかったので、まずは手堅くキャッシュを得られるブロックチェーンのコンサルビジネスをしていた、というのが最初の2年間でした。

しかし、コンサルビジネスはもともとやりたかったことではないし、会社としても“性に合わない”という違和感がありました。

ブロックチェーン関連ビジネスを展開しているので、企業間のデータ共有や複数企業を巻き込んだシステム作成などを行えるのではないかと考えたこともありました。ただ、それは想像以上に複雑だった。結局のところ、自分たちの実力不足だったのです。

とはいえ、LayerXが目指しているのはお金の流れや価値の流れをデジタル化するということ、経済活動をデジタル化するということ。ブロックチェーンに縛られる必要はありません。そこで、アプローチの仕方を変えて、1社1社のデジタル化のお手伝いとして経費精算や請求書処理サービスの提供をしていくことにしました。顧客やサービスを少しずつ広げていったところ、結果としてSaaSがメインの会社と見なされるようになった、というわけです。

──後半の2年間、SaaSビジネスを展開してきて、どのような手応えを感じていますか。

去年は種まき期でした。今はプロダクトマーケットフィット(PMF)に近い手応えを感じています。使いやすい、課題を解決できる、デジタル化に便利だと考える顧客が、プロダクトを継続的に、また複数導入してくださっているからです。創業から4年、振り返ってみれば前半と後半では全く別の会社だとわたしは捉えています。

「なぜ」を5回繰り返し、必要な機能を落とし込む

──事業を展開する上でのLayerXの強みは。

開発力の高さだと思っています。開発力というと、技術力の高さと考えられがちですが、それだけではありません。まず、商談やユーザーヒアリングを通して抱えている課題やプロダクトについてのフィードバックをいただいています。

またLayerXには、経理業務を何十年もやってきたその道のプロといえる人たちが転職してきています。業務に携わっていた人が開発側に回っているというわけです。

ユーザーからのフィードバック、そして業務経験者による開発という2つの強みにより、現場がどのような課題をペインを抱えているかを分析して、プロダクトに実装できる。ユーザーの利便性を高めたいという1つの方向に向かってエンジニアだけでなく、セールスやマーケティング、経理の現場に長くいた人たちがプロダクトに向き合うから、満足度の高い製品を生み出せているのだと考えています。