そこでニーズの急増と同時に直面したのが組織崩壊の危機だ。

「コロナの影響で問い合わせが急激に増える一方で、人手不足で対応が間に合わない。そんな状態が続いてメンバーたちも疲弊してしまい、ピーク時には離職率が55%ほどになってしまっていたんです。もともとトップダウンで、あらゆることを僕が決めて指示をしていくようなかたちで経営をしていました。それが急激に需要が増えた時に組織として機能しなくなり、崩壊してしまったんです」(辻氏)

この困難をどうすれば乗り越えられるのか。辻氏が頭を悩ませていた時、偶然にもラクスル取締役COOの福島広造氏から連絡があったのだという。

当時ラクスルではさらなる事業成長に向けて、紙への印刷から「オフィス・産業資材への印刷」へと領域を拡張させる構想を練っていた。そのためにパートナーとなる出資先候補を数社リストアップし、最初にコンタクトをとったのがダンボールワンだった。

「カスタムECの領域において、景気の停滞やコロナの影響があったとしても顧客から使い続けてもらえる『エッセンシャルサービス』とはどんなものなのかをずっと考えていました。その中で梱包材の領域はEコマースが栄えるほど広がっていく市場であり、これからEコマースの流れが加速していくことを考えると、景気がどうなろうとも必ず使い続けられるものだと思ったんです」(福島氏)

もともとダンボールワンがラクスルのテレビCMサービス「ノバセル」を活用したことがあったため会社どうしの接点はあったが、福島氏から連絡をしたのは2020年の8月が最初だったという。

「Zoomで1時間半ほど話をしたのですが、辻さんがラクスルのことを『社員よりも詳しいんじゃないか』というくらい初期の頃から良く知ってくれていて。事業の話を聞くと、ファブレス型のシェアリングプラットフォームを作り、しっかりとマーケティングに投資しながら伸ばしていくというビジネスモデルも完全に一緒だったんです」

「お互いにシェアリングプラットフォームという考え方がそこまでメジャーではなかった時から挑戦を始めて、別々の業界で同じようなことをやり続けながらシェアを高めていった。ビジョンやミッションも方向性が一致していて、生き別れの兄弟に出会えたかのような衝撃でした」(福島氏)

一方の辻氏も、Zoomで面談をした時から「ラクスルと一緒にやることでさらに成長できるのではないかと確信した」と振り返る。