事業面においては共通点が多かったこともあり、顧客分析の考え方やマーケティング施策など細かい部分も含めて“ラクスルが先輩として培ってきた知見”を提供してもらえたことが大きかったという。

一方のラクスルとしてはどうか。福島氏はダンボールワンが加わることで「領域のリーディングカンパニーとともにEC市場自体を広げる取り組みができたことの意義は大きい」として「事業領域を広げていく上での武器が増えた」と話す。

「50億円超の顧客基盤が横についたことで、ラクスルというブランドが(チラシや名刺だけでなく)いろいろなものを扱っていくことを証明できたのではないかとも思っています。ラクスルブランドとして、BtoBのカスタムECを全部やっていく総合的なブランドとしての大きな一歩目になったのではないかなと」(福島氏)

2022年7月期の売上高についてはラクスルの決算説明会資料で開示されている四半期ごとの売上を合算するかたちで算出
2022年7月期の売上高についてはラクスルの決算説明会資料で開示されている四半期ごとの売上を合算するかたちで算出

会社の成長を考えると「代表交代がベストだと考えた」

冒頭でも触れた通り2022年8月1日付で辻氏は代表を退任し、1年前からダンボールワンの取締役副社長として事業の成長を支えてきた渡邊建氏にバトンタッチをした。渡邊氏はラクスルで執行役員印刷事業部長を務め、同事業の売上高が100億円から200億円規模まで成長するのを支えた人物だ。

辻氏が2005年に能登紙器でECサイトを立ち上げてから17年。会社や事業に対する思い入れは強いが「ダンボールワンの成長を考えると、この選択がベストだと思えた」という。

「多少の気遣いもあったとは思いますが、(ラクスル代表取締役の)松本さんや福島さんたちからは経営者としてこのまま挑戦して欲しいと言っていただき、僕自身も最初は続けてみようかなとも思っていたんです。ただ、実際にマネジメント層を中心にいろいろな人に入っていただき、仕事をどんどん引き継いだことで会社が一気に伸びた。これからのダンボールワンのことを考えると、CEOに関しても事業家として事業をしっかり伸ばせる人にバトンタッチした方が良いと考えるようになりました」

「その点(後任の)渡邊は、ラクスルの印刷事業の成長に大きく貢献しており、まさに今のダンボールワンのフェーズからその先を作ってきた人間です。実際に副社長に就任してからも活躍してくれていて、経営者として素晴らしい人なので、安心して任せられる、彼に任せたいと思いました」(辻氏)

国内のダンボール市場およびダンボールEC市場の状況
国内のダンボール市場およびダンボールEC市場の状況。ラクスル株式会社2022年7月期決算説明会資料より

辻氏によるとダンボールワンは現時点でダンボールEC市場において50%以上のシェアを取れているものの、そもそもダンボール市場はまだまだEC化が進んでいない領域。市場全体の規模で見ると、同社の売上は1%にも満たない。