「サービス残業は当たり前」と主張するベテラン社員は、内心何を考えているのか?Photo:PIXTA

些細なことでイライラしたり、空気が読めずにトンデモ発言をしたり、武勇伝を何度も繰り返したり。そうした言動で周囲に迷惑を掛ける中高年層は、たとえ過去に仕事で成功していても、若者たちから「老害」だと認定されてしまいます。ですが、もちろん本人たちは悪気があって老害っぽい言動をしているわけではありません。では、なぜ「やらかす」のでしょうか。医学博士・平松類氏の著書『「老害の人」にならないコツ』(アスコム)から抜粋して、その答えをお届けします。今回のテーマは「価値観の押し付け」について。

「丁稚奉公」をあたりまえと考える時代錯誤な「老害」

 Rさんは、2年ほど前に金属加工業を営む小さな会社に就職しました。いわゆる“町工場”です。

 最初はやる気満々で、いきいきと働いていたのですが、最近は「続けていけるかどうか、自信がなくなってきた」と、友人に弱音を吐くようになりました。どうやら、ひとりのベテラン職人に、頭を悩ませているようなのです。

「Sさんていう70歳近い大先輩なんだけど、典型的な昔かたぎの職人で、むちゃくちゃなことばっかり言ってくるんだよね。『サービス残業なんてあたりまえ』とか、『技術が得られる環境に身を置かせてやっているんだから、逆に金を払ってほしいくらい』とか。いったい、いつの時代の話だよって思わない?」

 この話を聞いた友人は、驚きのあまり唖然(あぜん)としてしまったとのこと。こういう絶滅危惧種のような人が、現実に存在するんだと……。

 Sさんにとっては、コンプライアンスとか、働き方改革とかは、おそらく異世界の概念なのでしょう。Rさんによると、中間世代の先輩たちは同情こそしてくれるものの、年齢的にも立場的にもSさんには逆らえず、助けてくれる様子はないとのこと。それだけ、Sさんの老害ぶり(老害レベルの高さ)が際立っているそうなのです。