「新しい事業を作ることは得意だったのですが、既存の事業を50億円、100億円と成長させていく上では今のままではダメなんだと感じました。福島さんと話をしていて、そのためには組織や事業計画、ガバナンスなどを含めてしっかりと事業化することが必要だと痛感したんです」

「僕自身、100億円規模まではなんとなくイメージができていたのですが、その先で頭打ちするかもしれないという危機感も持っていました。ラクスルもかつて組織崩壊に近い状態を経験していたことを聞いたり、事業の成長戦略などを相談したりする中で、一緒にやるべきだなという結論に至りました」(辻氏)

Zoom面談の2日後には福島氏が金沢にあるダンボールワンの本社を訪問し、出資や出資後の組織体制などについて議論を交わした。そこから正式に資本提携に向けた協議を進めていったが、実は2020年12月の資本参加の発表に先がけてラクスルからダンボールワンへ組織再編のキーマンとなる人材を送り込んでいたという。

「方向性としては完全に一緒になっていくことを目指しながらも、まずは辻さんの抱えている悩みを解決するために我々がしっかりとバリューを出せるのかに取り組んだのが最初のフェーズ。正式にディールが決まる前に、担当者がダンボールワンに参画していました。そこから組織の立て直しや事業開発を一緒に進めていく中で、辻さんがバリューを感じてくださっていたため、次のステップとして取締役を派遣して経営自体を一緒にやっていくようにしました」(福島氏)

2020年にラクスルが資本参加を発表した際の福島氏のツイート
2020年12月にラクスルが資本参加を発表した際の福島氏のツイート

資本参加の結果として訪れた変化

ラクスルとタッグを組むことで何が変わったのか。辻氏は「人とビジョンと知見」の面で大きな変化があったという。

「自分がずっと悩んできた組織の課題が2カ月ほどで掌握されて、離職率も数パーセントまで改善されました。グループ会社化や子会社化となれば働きづらくなる可能性もあるのに、自分たちの場合は完全に逆で、社員に聞いても1人1人にオーナーシップを持たせてくれるようになったので働きやすくなったと言うんです」(辻氏)

従来は、社員にとっては何をすれば評価されるのかがあいまいだったほか、ビジョンについても明確に言語化されたものがなく、「何のために事業をやっているのか」「何を実現させたいのか」がブレることもあった。ラクスルグループに参画することで「ラクスルのビジョンやミッションを掲げることができ、目指すべき方向が明確になったのが会社としては1番良かったこと」だと辻氏は話す。