そこで辻氏が始めたのが、売れ行きの良いサイズのダンボールを大量生産し、既製品として小分けで販売する試みだ。そうすることで、該当するサイズに関しては「大手のメーカーが2万箱で(1箱)20円で売っているものを、200箱で(1箱)13円で売る」といったことができ、価格の面でも価値を訴求できるようになる。

ユーザーが直感的に使えるように細かい工夫も凝らした。たとえば「サイズを測るのが面倒」という声に応えるため、“人がダンボールを抱えた写真”をサイトに掲載し、よりイメージしやすいように変えた。

ECサイトの写真についても工夫をした
人がダンボールを抱える写真に変えることで、サイズ感をイメージしやすくした

問い合わせの数が増えてくる中で、対応のスピードやサービスの質を維持できたのは自動見積もりシステムを開発したことも大きい。365日24時間、いつでもインターネット上で見積もりができるようになったことで、オーダーメード品であっても素早く出荷できる体制が整った。

「一度軌道に乗ってからは、売り上げが毎年ほぼ倍々のスピードで成長を続けることができました。その要因は業界で非常識と思われていることや、業界にはないものをどんどん取り入れ続けることができたからだと思っています。もちろんうまくいかないことの方が多くて、実際には10個やれば7個くらいは失敗しました。たとえば海外への引越しを控えている人向けに必要なダンボールをまとめた『海外引っ越しセット』などは、全然売れませんでした(笑)」(辻氏)

ダンボール製造業から受発注プラットフォームへの進化

「半年の売上が7000円」から始まった事業も、試行錯誤を繰り返す中で年商数千万円、数億円といった成長を続けた。2016年にはその功績が認められ、辻氏は代表に抜てきされている。

冒頭で触れた通り2017年には辻氏がMBOすることになったが、その頃には会社の売上が7〜8億円程度まで拡大しており、ECサイトはその8割を占める主力事業に育っていた。

実はその当時「また1から事業の立ち上げにチャレンジしたい」と考えていた辻氏は、債務超過の会社を承継する目的でM&A関連の会社に相談をしていたという。すると、そこで偶然にもダンボールワン自体が売りに出ていることを知り、最終的に自ら経営権を取得することを決めた。これがMBOに至った背景だ。

MBOを実施してからは「(工場の設備投資などではなく)テクノロジーやマーケティングへの投資」に力を入れ、ビジネスモデルを「ダンボール製造業」から「受発注プラットフォーム」へ進化させるための取り組みを始めた。