また、ポテトチップスを研究する際に参考にしたのは天ぷらの製法でした。スナック菓子に料理の製法を取り入れる。そこまで製法にこだわり抜いた末に湖池屋のポテトチップスがあります。この“こだわる”という価値が、今のブランドの哲学や世界観に共感できるかどうか、購買を決めるトレンドに刺さるのではないかと思いました。

プレミアム市場定着までの5年間の軌跡

大槻:大人も楽しめるスナック菓子とおっしゃっていましたが、具体的にはどういったターゲットを想定して商品企画をされているのでしょうか。

近藤:スナック菓子は、成人するタイミングで離脱が起きやすいんです。20代は10代に比べて健康志向になります。また40代以降はよりヘルシーなおせんべいに移行していきます。しかし冒頭でもお伝えした通り、湖池屋プライドポテトは大人にも楽しんでいただきたいため、20代後半〜60代まで、オールターゲットとしました。

大槻:湖池屋プライドポテトは味への追求がすごいです。その一方でコンソメ味など、すでになくなっている商品もあります。どういった意図があるのでしょうか。

髙戸:5年前の湖池屋プライドポテトの発売で、私たちは今までのポテトチップス市場になかったプレミアム市場を作りました。インパクトはあるものの、お客様に買い続けてもらえるか、従来のレギュラー商品にどう食い込んでいくか……。現在のラインアップに定着するまで時間がかかりました。

例えば、健康志向のトレンドに沿って無添加シリーズを作ってみたり、プレミアムということで本格食材シリーズを作ってみたりと模索しました。従来ののり塩も、海苔好きなら海苔に求めるものは何か、塩が好きなら塩に求めるものは何か。一品ずつ味を研究していきました。その結果、湖池屋プライドポテトののり塩は圧倒的な海苔の量を実現しました。塩味も、あたりさわりのない塩味ではなく、生地との相性や、キレと旨みのバランスを追求した「岩塩」にたどり着きます。

大槻:パッケージも他のポテトチップスとは違います。

近藤:スナック市場では「盛り」と呼ばれている習慣があります。パッケージにおいしそうなチップスをたくさん盛って見せるという手法です。しかし湖池屋プライドポテトでは、たくさんあっておいしそうではなく、1枚1枚のチップスをおいしそうに見せようとしました。

ポテトチップスのプレミアム市場を切り拓いた老舗の一品、ヒントは先代の味の追求

食品は2秒で買うか買わないかが判断されるとも言われています。味の名前も、商品自体も、2秒でストレートに伝わるように、今でもコピーライターや社内のメンバーの意見をもとに、あれこれ言い合いながら考えています。