「さらにコミュニティでの貢献を求められるものの、(コミュニケーションのための)Discord上でのやりとりのスピードが速くてついていけない場合もある。marimoではこうした要素を全部なくしてみようという考えで作っています」(古川氏)

  • ホワイトリスト  :  優先的に良い条件でNFTを購入できる権利のようなもの
  • AMA(Ask Me Anything): 「何でも聞いて」から転じて、質問を受け付けるミーティングのこと
  • Airdrop : 条件を満たすことでトークンを無料で入手できるイベントのこと

NFTの価格は0.01ETH(正式販売を始めた時点のレートで約2300円)と安めに設定し、結果的に売り切れはしたものの1万個用意することで「値段が急騰して手に入らないということがあまりない」状態を目指した。

マリモに関しては“レア度が高いアイテム”をなくし「じっくり育てれば大きくなり、大きいものが偉い」ように設計。水の透明度という概念を入れ、定期的に水を替えることでマリモが少しずつ育っていく仕組みにした。

NFTプロジェクトでも定番となっているホワイトリストやロードマップも、初心者にとっては難しい要素になりうるためあえて作っていない。コミュニティはDiscordではなくTwitterを選んだ。コミュニティ内でも特段何かをする必要はなく、自分のmarimoの大きさを自慢したり、人のmarimoの水を替えてあげたりといったように、ゆるいコミュニケーションができる場所にしている。

「シンプルな『育てゲー』のようなイメージです。(marimoは)5年とか10年経たないと大きく育たない設計になっていて、まったり楽しんでもらうことを想定しています。コミュニティもゆったりしていて、参加している人がカレンダーを作ってくれたり、(コミュニティ向けの朝のあいさつとして)『マリモーニング』と発信しあって楽しんだり。自分自身のWeb2.0的なコミュニティの知見も使いながら、少しでも楽しくなるように作っています」(古川氏)

NFT1.0からNFT2.0へ。キーワードは「IP創出」「ユーティリティ」「ゲーム」

古川氏によると、当初は「日本円で200円くらいの価格帯で、1000個ほど販売する」予定だった。最終的には10倍程度の価格で1万個を用意する方針に決まったが「社内では『こんなの売れない』という反対の声も多く、全部で1000個売れれば大成功と考えていた」そうだ。

わずか数分で1万個が完売したことには驚いたというが、購入者の約4割は初めてNFTを買った人たち。「いろいろな人から『初めてNFTを買いました』という声をもらって、やっぱり敷居の高さのようなものがあったのだと感じました」(古川氏)。

現在もOpenSea上で二次販売がされている
現在もOpenSea上で二次販売がされている

現在はNFTが「投機的な一点モノのアート」のようなイメージで捉えられることも多く、業界の中ではこのようなNFTを「NFT1.0」と呼ぶ人もいる。古川氏自身はmarimoを販売してみることで、NFT1.0の先に今後広がっていく可能性のある「NFT2.0」の姿がぼんやりと見えてきたという。