古川氏が具体例として挙げたのが「IP創出」「ユーティリティ」「ゲーム」の3つの領域だ。

1つ目はIP創出の手段としてのNFT。NFTを活用しながら資金や応援者を集め、本気で巨大なIPを作ろうとするプロジェクトがいくつも生まれ始めている。魅力的なIPになればなるほどNFT自体の価値もあがるため、IPがアニメ化やゲーム化などにつながれば、そのNFTを欲しい人も増える構図だ。

2つ目はユーティリティ重視のNFT。たとえばスタートアップのNOT A HOTELでは、同社が展開する別荘を1日単位で利用できるメンバーシップをNFTで提供している。ユーザーはその権利を“運営者が間に入ることなく”売り買いできるのがポイントだ。

「デジタルの権利が統一化された規格で誰でも売買できるため、ものすごく使い勝手が良い。既存の技術のほうが実装がシンプル、と言われることもありますが、一社ではインパクトが低く、複数企業でやる場合は、各企業間での統一の規格を合意するほうがコストが高いため、実現が困難なことが多い」と古川氏は話す。

3つ目はゲームの1要素としてのNFT。投機的なものではなく、ゲームが軸として存在する上で、そこにNFTを組み込むことで「(スキンの)着せ替えができて楽しいとか、値上がり目的でとかではなく本当にこの服が欲しいから500円支払う」といった方向性は可能性があるという。

NFTを活用してクリエイターの活動支援へ

今後の方向性としてはmarimoに名前をつけられるようにしたり、お互いにmarimo同士で友達になれるようにしたり、対戦ゲームのようなことができるようにしたりといったかたちでサービスの内容を充実させていく方針だ。

古川氏によると、marimoの設計としてはmarimo自体の性能や大きさといったデータはブロックチェーン上(オンチェーン)に書き込み、その他のデータはオフチェーンに書き込むようにしていた。こうすることでマリモの大きさや性質は変わらないものの、人からもらったマリモの名前は変えることができる。

「オフチェーン上にいろいろなデータが溜まって楽しいことができるようになると、NFTとしての価値も上がって売りたくなくなるのではないかと思っています。自分が頑張って育てたものは簡単には売らないですよね。(marimoでも)そんなことができたら面白いと思うんです」

「NFTの画期的なところは『所有という虚構』を信じられるようになったことだと思っていて。デジタルデータを所有する感覚って、インターネットができてからほぼゼロだったけど、みんながそれを信じられるような土台ができたことが革新的なことだと思います。だから、意識しているのはその虚構をどれだけ信じられるようにできるかどうか。自分が1から育てたマリモは絶対に売れないと思ってもらえれば面白いので、そういうのを見たくてやっています」(古川氏)