就職するのがデフォルトである、というのは起業しない言い訳として最もパワフルだ。デフォルトは、能動的な意思決定を伴わず実現するので、非常にパワフルだ。


この伝統は実はたった100年程度の歴史しかない。それより以前は、生活の術は農業だった。中世に始まった、農業から製造業への移行と同じような変化が、いまちょうど起こっていると思うのだ。


農地を捨て街に出た脱小作人は、狂気扱いされた。大勢の人が集まって暮らす「街」などに出て、自分の食べる食料も育てずにどうやって生きていくんだ、と思われていたのだ。


起業が当たり前になったときに振り返ると、就職も小作人も同じに見えるだろう。毎日同じ時間に出社し、ボスに仕事を捧げ、ボスの小部屋に呼ばれて、「まあ座りたまえ」と言われたら、座るだなんて!

(ポール・グレアムのブログ記事「Why to Not Not Start a Startup(スタートアップを始めない理由)」より抜粋、要約)

このコラムが世に出てから15年後の今のシリコンバレーで、これと同じ趣旨のことを耳にすることはもうない。それは、このキャリアの世界観の変化が、すでに実現したからだ。日本の2030年代はそういう時代になる可能性が高いし、そうならないといけないと思う。個人も企業も、適応するには劇的に行動原理を変えないといけない。