駒崎:民主主義にのっとったアクセス方法を、知らない理由ですね。まず基本的に、政治不信だと思います。例えば、お住まいの自治体の議員の名前を何人挙げることができますか。おそらく、自分たちの生活をよりよくしてくれるはずのエージェント機能を担う、議員の名前を知らない人がほとんどではないでしょうか。

しかしながら実は、生活の8割は基礎自治体がカバーしているので、基礎自治体が変わることは自分の生活が変わることなのです。こういったつながりを知らないというよりは、実感できないし、信じることができないということだと思います。

学校教育の中で地方分権という言葉を学んではいても、それは何の実感にもならない。例えば「校則を変えよう」として実際に変えることができたら、ルールは変えることができると信じられる。この信頼が大事だと思います。

私たちは、小さい頃からルールは守るものだと教え込まれて、ルールを守らなければ、怒られてきました。でも、本当はそうではないはずです。ルールは変えることができる。その変えられるという成功体験があれば、また別のルールも変えられるかもしれない、社会のルールも変えられる可能性があるという信頼につながっていきます。

この信頼を醸成する機会を得てこなかった私たちは、「世の中なんて変わらない、変えられない」と基本的に思ってしまっているのだろうと思います。そういう意味で、起業家というのは物を売ったり買ったりするだけではない。身の回りの環境を変えられるという確信を持ってもらう存在になることが大事です。

馬田:ルールメイキングですね。

駒崎:まさに、その通りですね。

大切なのは手法ではない。「誰が困っているのか」に目を向けること

馬田:政策起業家が増えれば、自分の生活がより良くなるだけではなく、周りの人たちの生活も良くなっていく。ビジネス的な起業家だけではなく、政策起業家のような起業家が増えることで、自分の身の回りを変えていくことができるという、自己効力感をもった人を増やすことにつながっていくのですね。

こういったアントレプレナーシップを持つ人を育てるために、学校で取り組むべき起業家教育とはどういうものでしょうか。駒崎さんのご意見をお聞きしたいです。

駒崎:馬田さんは起業家の種類を9つに整理されていると思いますが、実はこれを素晴らしいと思っていたのです。一般的に起業家とは、ビジネス起業家(商業起業家)のみを指す狭いワードだと思いますが、起業家はビジネスだけではない。