Photo: zhuweiyi49 / gettyimages
Photo: zhuweiyi49 / gettyimages

「M&Aは『グロース』と『ハピネス』をデザインできるか?」をテーマに、M&Aクラウ​​ド代表取締役CEOの及川厚博氏が、M&Aを経験したスタートアップ、事業会社、VCへ話を聞く本連載。連載の第2回として前回に引き続き、国内スタートアップM&Aの概要を及川氏が解説。M&Aの交渉で論点となる企業価値算定、またM&A後のグループイン企業のキーパーソンへのインセンティブ設計など、スタートアップM&Aで買い手・売り手の双方が恩恵を享受するための条件を考える。

売り手の視点:親会社のリソース活用で、事業成長の加速を狙う

連載第1回の記事では、スタートアップのM&Aが起きる背景について買い手の視点で見てきました。次は売り手の視点から、M&Aという選択につながり得る状況を整理してみます。

売り手視点では、スタートアップならではのニーズがより前面に出てきます。

  • 創業期~成長期にある事業・会社の成長促進
  • 起業家のキャリア・モチベーションの観点

主にこの2つが、売り手がM&Aを考え始める動機となります。

1つ目の事業成長手段としてのM&Aでは、起業家は株を手放す一方で、経営者としては会社に残るケースが多々あります。自身はオーナーではなくなる代わりに、親会社という後ろ盾を得て経営を安定させ、親会社の持つさまざまなリソースも活用できるようになるという選択です。