ただし、2022年はスタートアップの資金の出し手であるVCにおいてネガティブな変化が生じました。世界的に上場テック株が暴落し、日本も影響を受けています。未上場最終ラウンドでの時価総額300億円超から上場時の想定時価総額が約45億円となったnoteの事例を象徴に、PSR(株価売上高倍率)が2倍、PER(株価収益率)が20倍くらいの相場となり、出口が縮小してしまいました。それによりスタートアップはまずレイターステージから調達が難しくなり、徐々にアーリーにも影響が出始めています。

オーガニックなVCマネーにおいて「エクイティ調達 冬の時代」になるのは間違いはなく、今後は大企業あるいは個人からのエクイティ調達がより増加する可能性が強まっているように感じます。

レガシーな大企業は当然のことながら、それ以上に上場したスタートアップ企業が増えたことで、出資やM&Aはこれから本格化するでしょう。創業者が経営陣にいることはそれらの意思決定がしやすくなります。そして、個人がスタートアップに出資できる方法である株式投資型クラウドファンディングも規制緩和が進んでいます。いまは1年間で資金調達できる金額は1億円未満となっていますが、その金額の上限が徐々に撤廃される方向になりつつあり、家計の金融資産2000兆円からスタートアップへの資金流入というのは美しい解決策かもしれません。

他に変化した特記事項としては、エクイティファイナンスとデットファイナンスを組み合わせた資金調達もかなり増えました。スタートアップが市民権を得つつあることと比例してデットファイナンスもしやすくなったと言え、今後さらに増えてくることを予感させます。

以上をふまえると、2022年は上場マーケットは沈んだものの、将来を見据えたマクロの変化で資金の出し手が増え、先達のスタートアップの努力による業界レピュテーションが逓増したことでスタートアップが戦いやすくなった「スタートアップコモディティ元年」と言えるのではないかと思います。

2022年に注目した・盛り上がったと感じる領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。

・大企業出身者のスタートアップ創業
DXが推し進めやすくなったことで、大企業を退職しスタートアップを志す起業家、あるいはスタートアップで経験を積んだ大企業出身の起業家が増えてきている印象です。日本の大企業が保守的で硬直化してしまっていることへのアンチテーゼと、スタートアップの資金調達環境が良かったことが相まっていること、大企業出身者スタートアップのアルムナイが増えているからだと思われます。