ウェブトゥーンの原作としてのウェブ小説

テラーノベル代表取締役の蜂谷宣人氏
テラーノベルの代表取締役を務める蜂谷宣人氏。2017年に入社後、COOを経て2020年に代表取締役に就任した

なぜウェブトゥーンの原作としてウェブ小説への期待が高まっているのか。そこには「漫画の作り方や売り方の変化」が大きく影響している。

近年漫画アプリなどで広がっているのが、1話ごとに販売をする「話売り」だ。

「最初の数話など一部を無料で公開し、それ以外は有料で販売する」「1日に数話を無料で公開し、それを超えた分については課金する」といったように具体的な販売方法はアプリや作品によってさまざまだが、複数話を収録した単行本(巻売り)ではなく、1話ごとに切り分けて販売する方法が目立つ。

そのため漫画の作り方も、「クリフハンガー(あえて物語を細かく分けて、1話ごとに続きが気になるようなシーンで終わる構成手法のこと)」などが採用されることが多い。

そしてこのような漫画のフォーマットと相性が良いのが、テラーノベルなどスマホを軸とした小説プラットフォームに投稿されている“スマホでの閲覧に最適化した小説”だという。

テラーノベル上のコンテンツにはLINEのチャットのような形式で物語が進む「チャットノベル」と縦スクロール型の「ノベル」の2種類が存在するが、共通するのは「スマホで読むことを前提として作られていること」(蜂谷氏)。1話あたりは1分〜2分程度で読めるものが中心だ。

「出版社の方々が言うのは、『スマホで売ることを前提とした漫画原作がなかなか見つからない』ということです。(スマホで売ることに)最適化されていない小説を原作とする場合、漫画制作側が毎回盛り上がりどころを作らなければならない。そこに難しさがあるんです」

「一方で自分たちのようなサービスはスマホで読むことを前提としており、(投稿されている作品も)続きが気になるようなフォーマットを意識して作られています。結果としてその作品を原作として漫画を話売りで展開するとなると、原作の構成を活かしたまま読者を惹きつける作品が作りやすい。(出版社の担当者からも)そのように言っていただけることが多いです」(蜂谷氏)

スマホに最適化したウェブ小説サービスとして拡大

作品画面のイメージ。左側がチャットノベル型、右側が通常のノベル型。
作品画面のイメージ。左側がチャットノベル型、右側が通常のノベル型。

テラーノベルはスマホアプリを軸とした小説投稿サービスとして、2017年にスタートした。

現在アプリのダウンロード数は600万件を突破。登録作家数は58万人、作品数は552万点を超えた。ウェブ版も展開してはいるもののほとんどがスマホでの利用者で、読者と作家ともに9割以上を占める。ユーザー層は大学生〜20代が中心で、7割程度が女性だ。

現在は話売りはしておらず、サブスクリプションモデルのみを採用。月額980円のVIPモデルに登録するとすべての作品が読み放題になる仕組みだ。